Main Part
始業式
アイドルを始めた理由
話は今からちょうど一ヶ月ほど前に遡る。わたしと
『
夏乃がリーダーとはいえ、アイドルグループとしての人気はほぼ御咲に頼りっぱなしの状況だ。スタイル抜群の御咲のプロポーションは、同じ女子のわたしから見ても憧れの存在でもある。身長は高いし、出るとこは出て引っ込むとこは引っ込んでる。あんな体型をわたしなんかが手に入れたら、わたしは周囲から放たれる視線の数から逃げてばかりかもしれない。最近では毎月どこかの雑誌で御咲の写真を見かけるようになったし、同じクラスメイトのはずなのにどうしてここまでわたしとは違うのだろうと中学の頃からそればかり考えていた。
それなのに、まさかわたしなんかとアイドルデビューするなんて……。
御咲はわたしなんかと組まないで、他のタレントと組んだ方がもっと人気が出たんじゃないだろうか。それともあれかな? わたしみたいな地味な女の子を近くに置いておくことで、自分がより目立とうみたいな? そんな邪な考えも一瞬出てきたけど、御咲はそもそもそんな女子ではない。素直で明るくて……そりゃこんなわたしなんかと比べたらオーラも出て当然だよね。本当にやれやれだ。
だけど御咲は、わたしを選んだ。『
「なんでよ? 御咲だったらわたしとなんか組まなくても、それこそひとりでだって歌手デビューすれば御咲なら成功するんじゃないの?」
「芸能界なんてそんな甘いとこじゃないわよ。私が愛花より歌が上手くないこと、自分でもよくわかってるでしょ?」
「でもわたしはある意味歌だけだし、御咲に比べたら要領も良くないし、女優やってても人気だって鳴かず飛ばずだよ? むしろわたしなんかいたら、足手纏いになるんじゃ……」
わたしはこう抵抗していたつもりだった。だけど御咲は声を出して笑ったんだ。
「ほんとあんたってバカよね。そんなことあるはずないのに」
「な、なんでそこでバカ扱いされなきゃならないのよぉ〜……」
「そんなの……少しは自分で考えなさいよ」
御咲はわたしの両頬を両手でつまむと、そのまま左右へえいって引っ張ってきた。御咲にしてみたらただの悪戯心だったのかもしれないけど、さすがにちょっと痛い。だけど御咲は少しだけ、怒っているようにも見えたんだ。本当は怒りたいのはわたしの方だって思うんだけど……。
そういえば『御咲と付き合うことになった』って悠斗から聞いたのはその翌日のことだ。わたしとしてはただ『ふ〜ん……』って感じだったけど、でも『芸能界なんて甘いとこじゃない』とかわたしには言っといてって、若干の違和感が残ったのも事実だったんだ。
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