神になりたかった少女の物語

シャラブラMarkⅡ

ふることのつたえ

太陽が大地に降りそそぎ貫き

女の大地は貪婪で淫靡な体臭を湧きたたせ放ちながら

そのからだを狂喜させる

大地の果て無い愛欲は早鐘の鼓動を打ち

その血潮は無限の胎動を地中に宿す

やがて一切は誕生した

草も花も獣も神々も全てが交わり恋をした


人が生まれた

人は神々を慰む指を持ちその寵愛を受け

栄華は忽ち絶頂を極めた

しかし人は天の神を招き入れた

共に在った神々は貶められ堕神となり

地の神々は人に永遠の禍根を残し闇に隠れた


人が新たな約束を交わすその前夜

一匹の獣が三つの人の子を産んだ

獣から出でた三人の姫は

母との間に臍帯で繋がれたまま生き

からだはすぐに母獣を凌ぐほどに成長した

やがて獣は自由を奪い命の脅威となってもなお

断ち切れない娘等に殺意を抱き一人目の姫を噛み殺した

そして残りの姫たちを血の滴るその歯牙に掛けんとした刹那

二人目の姫は自ら臍の緒を噛み切り母と決別して自由の身となり

最後の姫は己の運命を開くため母なる獣をその指で縊り殺した


自由を手に入れた姫は人になり人とまじわり子を成し

穢れとされる命を次代に繋いだ

母を手に掛けた姫は天の神に愛されたがゆえ

時に捨てられたまま在りつづけ母殺しの浄罪を待つ身となり

母に弑された姫は死してなお地の神と人との

あらゆる闇を蝟集した精霊となり

自らが天の神に取って代わるという野心を抱き

めぐる時のはざまで待った


神は死んだ

光あれ



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