第4話 あいとえふの話

 

 不知火家で行なった入学祝いも終わり、俺は自分の部屋のベッドで眠れずにいた。


 時計を見ると、12時を回っていた。


「眠れん……」


 理由は1つ。れいかの部屋で起きたことだ。


 俺は、れいかの笑顔にときめいてしまったのだ。


 時計の針の音が部屋に鳴り響く。


 明日から学校だから寝ないといけないという焦りと、れいかの笑顔が脳内を交差していく。


 交差すればするほど。全く眠れない…!


「れいかは、寝たのかな……」


 手を伸ばし、スマホを取る。電源をつけるとスマホの光が眩しさが、目を冴えさせてしまう。暗い部屋だとなおさらだ。


 れいかにLINEを送ったが、返信がない。もうとっくに寝ているのだろう。


 とりあえず、目をつぶろう。これでいつか眠れるはず……。




「……マジで眠れん」


 どれくらいの時間が経っただろうか。


 時計を見ると、針は3時を指していた。


 どうするべきか、俺には2つの選択肢があった。


1. もう少し目をつぶる。


2. このまま朝まで起きる。


 の2択だった。


 起きる時間は6時、眠れたとしても、最大3時間しか眠れない。


 今寝たら、逆に寝坊する可能性もあった。


 選ばれたのは—————……徹夜だった。


 逆に寝ないほうがいいと判断した(深夜テンションによる知能低下)。


 まぁ、3時間起きればいいだけだから、余裕だろう。


 俺は、暇をつぶすため再びスマホに手を伸ばし、電源を入れた。画面の光がより一層眩しく感じた。




 しばらくして、時計を見ると5時半だった。


 大体、徹夜作戦は失敗するものなのだが、うまくいってしまった。


 そして俺は、閃いてしまった。今のうちに準備しておけば、仮眠も取れると(深夜テンションによる以下略)。


 制服を今のうちに来ておき、教科書もカバンに締まった。


 そして、制服のままベッドに横になった。




 アラームが鳴る。時刻を見ると6時半だった。


 窓から朝日が流れ込んでくる。


「まぁ、このために準備したんだしもう少し寝るか」


 俺は再び寝た。




「…はると、起きて」


 誰かに、体を揺らされる。


「ん〜………後5分」


「もう8時だよ。遅刻しちゃうよ?」


「8時〜?ん〜……8時。………8時ッ!?」


 勢いよく起きると、制服を着たれいかがいた。


「……あれ?………うちの高校って、何時登校だっけ?」


 頭が回らず、れいかに聞く。


「8時半」


「あれ、もしかして、走らないといけないやつ?」


 れいかは、頷いた。


「行ってきます!」


 俺はその瞬間、すぐさまカバンを持ち、れいかと家を出た。


 ……結果ギリギリで間に合った。


「……はぁ…はぁ、平気か?れいか」


「………うん」


 れいかも息を切らしていた。


「……とりあえず、教室入ろ?」


「……そうだな」


 息を整え、俺たちは教室に入った。


 教室に入ると、何故か注目されていた。


 何故かわからず、小声でれいかに聞いた。


「……なんで、注目されてんの?」


「……そりゃ、入学式の日に同級生殴ったんだから、注目もされるよ………」


 れいかは、呆れた様子だった。


 クラスメイトに見られながら、席表を見ると、俺の席は、1番後ろの窓側の席で、れいかはその隣だった。


「お、隣じゃん」


「ほんとだ………!」


 れいかは、冷静を保っていたが、嬉しそうだった。


「じゃ、行こ?」


「あぁ。そうだな」


 俺たちは、席へと向かった。


 俺たちが席に着いてから数分後、担任が教室に入ってきた。


 HRが始まり、1年生が行う行事を大まかに説明し、終了した。


 HRが終わると、れいかが話しかけてきた。


「この高校にスキー合宿があるなんて、知らなかったね〜」


「確かに、知らなかった」


 恐らくスキー合宿は、1年生でやるイベントの中では1番のイベントになるだろう……。


 俺がれいかと話していると、前の方から誰かが話しかけてきた。


「みんなが知らないのも、無理ないわ」


 前を見ると、長谷川えりが立っていた。


「この学校初めての行事だもの。………私たち運がいいわね」


 長谷川はフフッと笑った。


「えりちゃん!」


「れいか、会うのは昨日ぶりね」


 長谷川とれいかが、手を合わせ再開を喜んでいる。


「……そして、久しぶりね。はるとくん」


 長谷川と目が合う。


「……久しぶり…」


「フフ……相変わらずね…」


「ん?どうゆうこと?」


 れいかが長谷川に問いかけた。


「なんでもないわよ」


 長谷川は笑顔で答えた。


「じゃあ、授業が始まるから私は戻るわ」


 そう言うと、長谷川は席に戻った。


「………」


 れいかは完全に疑っているようでじーっと見てくる。


 長谷川のやつ、絶対わざとだろ…。


「ねぇ……はると、えりちゃんと何があったの?」


 れいかは、小声で聞いてきた。


「……何も」


 もちろん嘘である。


「………いつか、教えてね」


 バレてる……。


 ……隠し通すのも時間の問題だなこれ。


 そもそも、幼馴染に嘘をつくのは不可能である。


「……今日も授業頑張ろうね」


「……あぁ」


 明らかに、れいかの機嫌が悪くなった。


 長谷川のやつ、一体何が目的なんだ……。


 その後の授業は、何事もなく終わったが、昼休み事件が起きた。


「はるとくん。LINE交換してくれない?」


「………は?」


 昼休みに、長谷川がLINEの交換を求めてきた。


「まぁ、LINEくらいなら」


 スマホでQRコードを見せる。


「ありがとう、また連絡するわ……」


 友達の登録が完了すると、長谷川は去って行った。


 俺の隣でれいかが物凄い形相をしている…。


「れ、れいか?どうした……?」


「何でもない……」


 明らかに機嫌が悪くなってる……。


 すると、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。


「じゃ、私行くね」


「わかった……」


 学校では、常に一緒にいる俺たちにも、離れなければいけない授業があった。


 それは、体育の授業だ。体育の授業だけは、バラバラになる。


 今日の体育は、男子が外。女子が体育館だった。


「さて、俺も行かなきゃな……」


 俺は、体操服を持ち、教室を出ようとした。


「お、はると〜。一緒に行こうぜ〜!」


 教室から出ると、後ろから声をかけられた。


 振り返ると、俺の知っている男が立っていた。


「……なんだ猿か」


「なんだとは、なんだ!失礼な!」


 こいつの名前は、近藤こんどうまさる。中学時代から、まさるのさるを取って、猿と呼ばれている。………見た目が猿に似てるのもあるかもしれないが、本人が嫌がりそうなので、言わないでおく……。


 猿は、クラスの男子で唯一の知り合いだった。


「……で、はるとは、1年でいい女見つけたか〜?俺的には、隣のクラスの————————」


 猿の事を無視しながら、俺は更衣室へ向かった。


 今日の授業は初回ということもあって、道具の説明や成績の付け方の話だけで、後は自由時間となった。


 男子たちは、各々自由に過ごしていたのだが、女子たちは、体育館でバレーボールをしていたため、男子のほとんどが、体育館に釘付けになっていた。


 俺も暇なので見物していた。


「いや〜、それにしても今年の1年は、当たりだよな〜」


 女子たちを見ていた猿と男子の何人かが、女子の話をしていた。


 俺はその話に耳を傾けた。


「確かに、レベル高いよな〜!」


「1年で、誰が1番可愛いと思う?」


 猿が、みんなに聞き始めた。


「そりゃ、長谷川さんだろ〜」


「清楚で美人だもんな〜」


 ……長谷川ってモテるんだな。知らなかった。


 あいつは、清楚の皮を被った魔王サタンだぞ……。

 

「後、1組の田中さんとか—————」


 興味がないので聞き流していると。


「———後、忘れちゃいけないのが、不知火さん!」


 ピクッ


 れいかの名前が不意に出てきたから、思わず反応しちまったじゃねぇか。


 まぁ、幼馴染の俺が見ても可愛いと思うし、こういった話題に出る理由もわかる。


「顔は可愛いし、何よりスタイルがいいんだよなぁ!」


「そうそう、胸もでかいし!」


 …………なんかこいつらが言うと殴りたくなってくるな……。


 れいかは身長170㎝と、女子の中では大きい方で、いわゆるモデル体型というやつだった。


でも、れいかがモテるなんて、みんな以外とわかってるじゃないか。


俺は、何故か自分が言われたかのようで、嬉しかった。




あれからちょっとして、授業の終わりが近くなり、男子たちは更衣室へと戻るのであった。




 

 一方その頃れいかは………。


 私は、体育の授業を終え、着替えていた。


 忘れ物をした、えりちゃんを待っていると、奥の方から女子生徒の会話が聞こえてきた。


「さっきの男子めちゃくちゃ見てきて、キモかったね〜」


「まじ、それなー」


 確かに、見られてた……。


 はるとも見てたのかな……。はるとになら、見られても………って!何考えてんの私!


 頭をブンブン振り、リセットする。


「ほんと、今年の1年はハズレよね〜」


「それな〜、みんなパッとしないよね〜」


 あー……完全に女子たちの会話ですね……。


「強いて言うなら、2組のはるとくんとか?」


 ビクッ!


 はるとの名前が出てきた瞬間体が反応してしまった。


 気になるので耳をすませる。


「あーわかる。はるとくんいいよね〜。尽くしてくれそうだし」


「じゃあ、1年生で狙うとしたら、はるとくんだね〜」


「そうだね〜」


「じゃ、そろそろ行こう!」


「そだね!授業始まっちゃう!」


 どうやら、教室に戻ったようだ。


 更衣室に私1人だけ残される。


「はるとって、モテるんだ……」


 心臓がキュッと苦しくなる…。


 もし…もし、はるとに彼女ができたら……。


 私は、どうなってしまうんだろう……。


 いつも通りに接してくれるのだろうか……。


 体が熱くなる……。


「ごめんなさい…、遅くなったわ。…………れいか?」


 今の私がおかしいだけ……。


 冷静な判断ができないだけなんだ……。


 はるとにもし、彼女ができたら……。


 その時は…。


 

 その時は……。





 その時は…………!




————————……!……!


 どこからか声が聞こえる……。


「—————っれいか!……れいか!聞いているの?」


 声の主はえりちゃんだった。


「………えりちゃん?」


「やっと気づいたのね……。授業に遅れるわ。はやく行きましょう?」


 えりちゃんは呆れた様子だった。


「あ、……ご、ごめん…私……」


「……話は、後で聞くわ。それよりも、はやく行くわよ」


「う、うん!」


私たちは、急いで教室へ戻った。




——————————————

おまけ


主要キャラのプロフィール


名前:はると


性別:男


身長&体重:175㎝、65kg


趣味:ゲーム


髪型:今はショートヘアで落ち着いているが、中学卒業時、ゲームで出てきた好きなキャラクターの髪色を真似ようと金髪にしようとしていたが、母親に止められた。


その他:幼少期に習っていた格闘技教室を今でも通っている。



名前:不知火しらぬい れいか


性別:女


身長&体重:170㎝、ナ、ナイショ!


趣味:SNS、音楽を聴く


髪型:中学入学時は短かったが、ポニーテールができるほどに伸びた。髪色は赤、体質と関係があるかは、不明。


その他:小学生の頃ははると以外の男子とほとんど話したことがなく、中学生になる前に『男の子と話す練習』をしたが、練習相手がはるとのため全く意味がなかった。



名前:長谷川はせがわ えり


性別:女


身長&体重:160㎝、……教えるわけがないわ。


趣味:読書


髪型:黒髪ロング


その他:中学時代、はるとと何かがあった……?



名前:近藤こんどう まさる


性別:男


身長&体重:165㎝、60kg


趣味:漫画、ネットでお宝写真集め


髪型:坊主、中学時代野球部だったため坊主だったが、高校になり坊主が嫌になり今は伸ばし中。


その他:女子には、モテないが男子からは絶大な支持を得ている。理由は、お宝写真を共有しているため。



またキャラが増えたらやります。お楽しみに!





 

 


 


 


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