第2話 幼馴染の私

 

 私たちは、クラス名簿の張り紙へと向かっていた。


「…クラス一緒だといいな」


 はるとは、立ち止まり私にだけ聞こえる小さな声で呟いた。


「…そうだね」


 私も立ち止まり、2人は向き合った。


「一緒じゃなかったら、どうしよう」


「その時は、俺が休み時間のたびに会いに行くさ」


 はるとは、そう言うとニコッと笑った。


 お、落ち着け私…。


 私とはるとは幼馴染…の、はずなのに。


 なんだろう…この感情…。わからない。


 今までに味わったことのない感情。


 考えれば考えるほど胸が苦しい…。


「れいか?」


 気がつくとはるとは、私の手を握っていた。


 鼓動が早くなるのと同時に、体から火が放出された。


 ハッと我に返り、すぐに火を戻した。


 そして、すぐに問いかけた。


「は、はるとッ!?ど、どうしたの!?」


「いや、深刻そうな顔をしていたからさ」


 び、びっくりした。だ、だよね。


 私とはるとはだだの幼馴染それ以上でもそれ以下でもないんだ。


 私は握られた手を優しく振りほどいた。


「大丈夫だよ…。ただ考え事してただけ」


「そうか?無理するなよ」


 そう言うと、はるとは歩き始めた。


 それに着いていくように私も歩き始める。


 私たちは、2人並んで校門をくぐった。


 クラス名簿の張り紙は体育館前に張り出されると事前に聞いていた私たちは、体育館へ向かった。


 体育館前に着くと、そこには新入生と思われる人が集まっていた。


「この辺に張り出されてるはずだ」


「そうっぽいね、にしてもすごい人だかり…」


 人混みはあまり好きじゃない。


「俺見てこようか?」


 人混みが苦手なことを知っていたのか、はるとが聞いてきた。


 だけどせっかくだし、自分のクラスぐらい自分の目で知りたい。


「いや、私も見たい」


「じゃあ、はぐれないように…。手…繋ぐか?」


 少し、照れながらはるとが提案してきた。


「フフ…私はもう子供じゃないんだよ大丈夫」


「そ、そうか」


「後ろ着いて行くから」


「わかった。はぐれるなよ?」


「だからはぐれないって」


 「ほんとかよ」と言いながら、はるとは歩き始める。そこに着いて行く私。


 しかし、この提案を断った私は、後悔することになった。




「はぁ……。やってしまった……」


 ものの1分ではぐれてしまった。


 まさか、私がここまでポンコツだと思わなかった。



 私は、さっきまではるとと話していた位置に移動した。



 ここで待っていれば、はるとは気付いてくれるだろうし。


 まぁ、待っているだけじゃ暇だし、入学生のことでも見て、時間潰そ。


 ふむふむ、あの集団は勉強ができそうな人たちが集まってるなぁ。みんな参考書を開きながら盛り上がってる。あ、あの子かわいい。


 で、逆にあっちのグループは、治安が悪そう。いかにも不良グループって感じだ。

 

 私、チャラい人とか苦手なんだよなぁ。


 ん?なんか1人こっち見たな。目合わせないでおこう。


「あれ?君今ひとりー?」


 不良男Aに話しかけられてしまった。


「い、いえ、友人を待ってます…」


「あら、そなの。よかったら僕たちと仲良くしない?」


 チャラ男Bも、こちらに来ていた。


 やば、これ結構ピンチだ。


「え、その…」


 戸惑っているとさらに追い討ちがきた。


「ほらほら、同じ新一年生同士LINEでも交換しようぜ〜。」


 ニヤニヤしながら、不良男Aが肩を組んできた。


 とても気持ちが悪い。


「ちょっと、やめてください…」


 私は、すぐに離れた。


「ね、お願いLINEだけでもさ。ね?」


 そう言うと、チャラ男Bも近づいてきた。


 しかも、なんかカッコつけながら。


 やば、挟まれた。


 左はニヤニヤしている不良男A。右にはカッコつけてるチャラ男B。


 うわぁ、どっちも気持ちが悪い……。


 断ってもしつこそうだし、ど、どうしよう……。


 私が困り果てた時だった。


「あんたら、何してんの?」


 はるとが戻ってきたのだ。


「はると!」


 私はすぐにはるとの後ろに隠れた。


 さすが私の幼馴染!


「あ?お前には関係ねぇだろ?」


 不良男Aがわかりやすく怒り始めた。これは多分威圧している。全然怖くないけど(れいかは格闘技経験者のため)。


「そうだよ君。僕たちは、後ろの女の子に話しがあるんだ。どっか行ってくれ!」


 チャラ男Bも、不良男A同様威圧し始めた。全然怖くないけど。


 しかし、はるとは全く動じていなかった。


「嫌だと言ったら?」


 そう言うとはるとは、相手を睨み返した。


「あぁん?お前やる気か?」


 チャラ男Aはそう言うと、指をポキポキし始めた。


「君はひとりで、僕たちは2人。やるんだったら容赦しませんよ?」


 チャラ男Bは、数で有利だとアピールしてきた。


 だが、そんなことは意味がないと私は知っていた。


 幼馴染である私だからこそ、知っていることがあった。



「確かに、そうだな…」


 その瞬間、鈍い音がした。


 不良男Aは、殴り飛ばされた。


 そして、驚くチャラ男Bに、はるとは言った。


「2人じゃ俺に勝てないからな」


 私とはるとは幼馴染だ。


 幼小中高と学校も一緒で、毎日毎日毎日遊んでいた。


 私とはるとは、常に一緒だった。


 学校も。


 好きな遊びも。


 好きな漫画も。


 そして、“習い事„も。

 

 そう。はるとは、私と同じ道場で格闘技を習っていたのだ。


「き、君は格闘技経験者だったのか、すぐに退散するから許してくれ〜!」


 はるとが経験者とわかったのか、チャラ男Bは逃げ出した。


 まぁ、追いかける必要はないだろう。


 不良男Aは……。気絶しているようだ。


「れいか!怪我はないか?」


 はるとは、振り向いて私を心配しだした。


「‥‥はぁ、こっちのセリフだよ」


 私は、小さく呟いた。


「ま、一件落着だね」


「だな」


 私たちは、周りを見渡した。


「「あっ」」






 私たち2人は、入学早々悪目立ちしてしまった。



 


 




 






 

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