第1話 燃えてしまうよ!れいかちゃん!
今日は高校の入学式だ。
中学生にとって、高校生活は憧れの存在であり、誰もが充実した高校生活を願っている。
今日はその憧れの舞台のスタートライン。遅刻なんてしてしまったら、入学早々悪目立ちである。
しかし、俺は朝に弱い。目覚ましの音では起きれない人なのだ。
だが、俺には幼馴染がいる。赤い髪がトレードマークの
俺が朝に弱いことは、幼馴染であるれいかは当然知っているわけで、起こしにくるのだった。
そして、今に至る。
「れいか!そっちも燃えてる!」
「……ほんとにごめん」
「いいから早く消火しろ!」
俺たちの高校生活最初の朝は消火活動からだった。
—————————
なんとか消火を終えた二人はリビングに向かった。
「行ってくるよ!母さん」
「あら、朝ごはんは?」
この人は俺のお母さん。年齢は……30歳を超えてから教えてくれなくなった。
「遅刻しちゃいそうだから、コンビニでなんか買うよ」
「わ、私のせいです、ごめんなさい……」
れいかが母さんに頭を下げる。
「だから、大丈夫だって!」
「で、でもぉ……」
れいかは申し訳なさそうな顔をしていた。
「本当に大丈夫だから………なっ?」
俺はれいかの頭を撫でながら言った。
「————っ!?わ、わかった…!」
れいかの顔が一気に赤くなった。
「よし!じゃあ、行ってくるよ母さん!」
「入学早々ラブラブねぇ」
母さんがクスクスと笑う。
「—————っ!?」
ボンッ!
また、れいかの体が燃え始めた。
「あ〜またかよ……」
俺は二度目の出来事に天を仰いだ。
「母さん!余計なこと言うなって!」
「ハイハイ、ごめんなさいねぇ。そんなことより、れいかちゃん大丈夫かしら?」
母さんが聞くと、れいかから出ていた火がゆっくりと収まっていった。
「はい、もう大丈夫です…」
「よ、よかった」
俺は、ほっと息をつく。
「よかったわ〜、……はると!れいかちゃんの隣に常にいるのよ!れいかちゃんは女の子なんだから!」
母さんは真剣な目でそう言った。
「あなたが、れいかちゃんを守るの。いいね?」
「わ、わかってるよ。…れいかは俺が守る!」
言ってみるとちょっと恥ずかしいな…。
母さんは安心したのか、真剣な表情からいつもの表情に戻っていた。
すると、れいかが俺の着ている制服を袖を引っ張った。
「はると、時間が…」
「あ、そうだった!行ってきます!」
「はるとお母さん、行ってきます…!」
れいかはニコリと笑った。
「行ってらっしゃい!気をつけるのよ〜二人とも〜!」
俺たちは、靴を履き家を出た。
————————————
「ここで、この時間ならもう歩いて大丈夫だろう」
「そうだね…」
家を出てすぐに走り出した二人は、学校の近くまで来たのがわかると歩き始めた。
ドタバタしていたからあまり見れてなかったが、今日のれいかは髪を結んでいた。あまり、詳しくはないのだが、ポニーテールってやつだろうか。
こう並んでいると、カップルみたいに見えても仕方がない…なんて、言ったらきっとぶん殴られるだろう。「勘違いするな!」って。
れいかは、幼い頃から格闘技を習っていたので、殴られるととても痛い。
普通に殴られるのならただ痛いだけなのだが、怒りがMAXになると火拳が飛んでくるので、そもそも怒らせないほうがいい。
れいかと喧嘩すると、母さんにも怒られるし……。
なんて、考えているうちにコンビニに着いたので、れいかに話しかけた。
「じゃあ俺、朝ごはん買ってくるわ」
「わかった…。私はそこで待ってる」
「了解…。じゃ、ちょっと行ってくるわ」
俺は、コンビニに入った。
「いらっしゃいませー!」
ここのコンビニの店員は毎回元気よく歓迎してくれる。
「あ、れいかの分の飲み物も買っておこう」
俺とれいかの家はお隣さんで、昔から親同士も仲が良く、幼い頃かられいかとはよく遊んでいた。
幼稚園から中学校まで学校も一緒で、高校も近所の高校に一緒に受験し見事に合格したので、幼小中高一緒の幼馴染となった。
近所の高校にしたおかげで、登校時間ギリギリに家を出ても余裕で間に合うが、初日からこうなるとは…。
「おっと、急がなきゃ」
俺は、お茶二本とサンドイッチを買って、コンビニを後にした。
コンビニから出ると、れいかはスマホを見ながら待っていた。
こう見るとれいかは、スタイルもいいし、さぞモテるんだろうなぁ。
おっといかんいかん。幼馴染としたことが。
「ごめん、待った?」
俺は、後ろから脅かすように言った。
実は言ってみたかったセリフでもある。
「———っ!?だ、大丈夫」
驚いたのか、れいかの手からスマホが滑り落ち、その手から火が出てきたがすぐに収まった。
「———おっと危ない。まだ、コントロールできないのか?」
俺は滑り落ちたスマホを地面ギリギリでキャッチし、れいかに返した。
「あ、ありがとう。ううん、もう暴発しちゃってもすぐ止められる」
そう言うと、れいかは指先に火をつけ、すぐに止めて見せた。
「なら、いいんだけどよ。何かあったら絶対言えよ」
俺はれいかの顔をしっかり見て言った。
我ながら少し恥ずかしい…。
「———っ!?…………オチツケワタシ…オチツケワタシ…」
れいかが何かブツブツ行っている。
ついでに体から火も出ている。
「お、おい。聞いてるのか?」
我に返ったのか、れいかの体から火が収まっていった。
「う、うん!大丈夫!」
「ほんとかよ…。あ、着いたぜ」
「あ、ほんとだね」
気付いたら、ここから三年間お世話になる高校に着いていた。
「改めて三年間よろしくな!」
「………うん!」
俺たちの高校生活が始まろうとしていた。
————————————
(……私…どうしちゃったんだろう…)
私は一人悩んでいた。
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