第3話 出会い・・・そして・・・

私はつまらなかった。

何も変わらない日常がとてもつまらなかった。

だから変えようとした。

何でもいい。ただ、このつまらない日常に変化が欲しかったのだ。

そんな変化を求め、足が向かうままに山の中に入った。

たくさんの草木、土のにおい、自然特有の空気がそこにはあった。

足を進めていくと、自然ではない”ある”匂いがした。

だんだんと濃くなってくる。少し開けた場所に出た。

私は驚いた。

そこには、たくさんの死体があった。

血生臭い香りが漂い、地面は死体から流れ出ている血でねっとりとしていて、まさに「血の海」だった。

だが、私が驚いたのは”そんなもの“ではない。

その「血の海」の中に、一人の少年がいたのだ。

きれいにする時間もなかったのであろう、髪はぼさぼさで小汚く、激しい動きによって、着物が着ているかも分からないくらいボロボロだ。

そして、身の丈に合わない、人の血で真っ赤に染まった「赤い刀」をその手に持っていた。

その光景に驚いてると、少年が私に気づき、話しかけてきた。

「あんた、こんな所で何してんだ?」

“何をしているのか“

第一声にそんな質問を問いかけた少年はあまりにも冷静だった。

得体のしれない大人を目の前にして少年は、助けを乞うわけでもなく、はたまた逃げるでもなく・・・

(あぁ、きっとこれだ。)

今、この瞬間、はっきりと分かった。

私が欲しっかったものを

私が追い求めていてものを

そして・・


〈私がするべきことを〉


それに気が付いた時、自然と笑みが浮かんできた。

「フフッ」

「なんで笑う」

「いえ、何でもありません。そうですね。私は何をしているのでしょうかね?」

「は?」

当然、少年は訳が分からない様子だった。

「じゃあ、なんでこんなとこにいるんだよ?」

「ん~特に行くとこがなかったからですかね。なんとなくここまで来てしまいました。」

「なんだそれ?」

少年は私の返答に納得がいってない様子だった。

しかし、私はそんなことは気にせず少年に聞いた。

「君はこんなとこで何をしているんだい?」

周りの状況と少年の様子で分かってはいたが、あえてそんな質問をした。

少年の口からはっきりと聞き出すために。

「俺か?俺は襲ってきた山賊たちを殺したところだ。」

やはりそうか。

見たところ、七~八人だろうか。

この少年が、決して弱くないであろう山賊たちを殺したというのだ。

たった一人で。

「なぜ君がそんなことを?」

「生きるために必要だったからだ。」

「山賊を殺すことがですか?」

「そうだよ。俺は生きるためにいつもそうしてきた。」

少年は生きていくために、人を殺しているらしい。

それはもう"普通の少年"のすることではなかった。

「では、なぜ君はそうまでして生き続けているんだい?」

「そ、それは・・・分からない・・・でも、これが俺の日常なんだ。」

生きる意味もなく、過酷な環境下で生き続けることが、この少年にとっての変わらない《日常》なのだ。

本当にそれでいいのか?

少年の日常が人の道を外れたような生き方をしていることが?

いいはずがない。

変わらず人を殺して生き続けることが、この子にとっての日常でいいはずがない。

ならば、私がこの少年にかける言葉は一つしかない。

この子のために。

そして、私のためにも。



「なら、私と一緒に”非日常“に来ないかい?」



これがのちに、「ヒロ」と名付けられる少年と「ゲン」という男との出会いであり、

少年「ヒロ」にとって今後の人生を左右する大きな分岐点となった。

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