第59話 ひみつ(3月14日)

きのうはまーくんから


ホワイトデーのクッキーをもらった。


いえのにかえって


おかあさんやねえちゃんにみせると


ねえちゃんが


「へー、ホワイトデーなんてしってるんだ。」


っていった。


そして


「でも、ホワイトデーはあした3月14日だけどね。」


っていってわらった。



まーくん、フライングだ!



ねえちゃんがオセロゲームしようといってきた。


オセロゲームは


ねえちゃんがつよくて ぼくはなかなかかてないから


つまんないんだけど


ねえちゃんのいうことには さからえない。


何回かたいせんしたけど


まけてばっかりでくやしくて


なんだかなみだがでそうになった。



そのとき


ピンポーンとげんかんのチャイムがなった。


げんかんからおかあさんのこえがする。


「カズ~!サトシくんよ~。」


さとちゃん!!


「ねえちゃん、オセロはもうおわりね!」


ぼくは はしってげんかんにいった。



「さとちゃん、きてくれたの?うれしいよ。はいって。」


ぼくがいうと


さとちゃんは


「ううん、ここでいいよ。」


っていった。


なに、あそびにきたんじゃないの?



「・・・これ。」


さとちゃんは手に小さなはこをもっていた。


そのはこをさしだし ぼくの手にもたせた。


そしてそのままぼくの手をギュ・・・っとにぎった。


手をにぎったままさとちゃんは


「バレンタインのチョコありがとう。きょうはホワイトデーだから。」


そういってそのあと


ぼくにチュってキスをした。


ほっぺじゃなくて口に。


さとちゃんとチューするのはこれで2どめ。


きゅうにキスされてドキドキする。



「じゃあ、またね。」


さとちゃんはそういってパタンとドアをしめてかえっていった。


さとちゃんのあしおとがすぐにきこえなくなった。


ぼくはドキドキがおさまるのをしばらくまった。



ドキドキがおさまってへやにもどるとねえちゃんが


「あれ、サトシくん、かえったの?」ってふしぎそうにきいた。


「うん、これもってきてくれただけだった。」


ぼくは小さなはこを ねえちゃんにみせた。


「ホワイトデーだからだって。」


ねえちゃんはそれをみて


「へー、カズのともだちはみんなりちぎだね。」って


かんしんしたようにいった。


「ねえちゃんはだれからも おかえしこないね。」っていったら


「友チョコはみんなであげあいっこするからホワイトデーはしないんだよ。」っていった。


「男の子にあげたのじゅんくんだけだもの。


じゅんくんも、ホワイトデーしてくれないかな~」っていった。



ぼくは はこをあけてみた。


ほしやハートのかたちのクッキーにカラフルな色がちりばめられていた。チョコ?


「へーおいしそう。おかあさんとつくったのかな?」


ねえちゃんが かんしんしていった。



ぼくはさとちゃんのくっきーをたべる。


カリッとしていてあんまりあまくなくておいしい。


なんまいでもたべられそうだった。


だけど一まいたべただけで がまんした。


まい日一まいづつたべよう。



さとちゃんのクッキーのはこをつくえにおいて


こんどはとなりのまーくんのクッキーのふくろから


ひとつクッキーをだしてたべた。


サクサクしてあまくておいしい。



さとちゃんからもクッキーをもらったこと


まーくんに はなしてもいいのかな・・・。


でもわざわざ いえにもってきてくれたってことは


はなさないほうが いいのかな・・・。



ぼくはどうしたもんかとかんがえる。



学校が休みじゃなかったら


ふたりとも3人いるときにわたしたのかな?


たまたま学校が休みだから・・・・。



ぼくはさっきのさとちゃんのチューをおもいだす。


さとちゃんもこいびとごっこだったのかな・・・。


キスされて


ドキドキして


ちょっとうれしかった。



キスのことは


いわないでおこう。


きょうのことは まーくんにはいわないでおこう。



ぼくは


まーくんにも


ひみつができてしまった。


さとちゃんにもまーくんにもひみつができて


ぼくこれからも2人となかよくあそぶことができるのかな。


ちがう、2人となかよくするためにひみつにするんだ。そうなんだ!



ぼくはふたりからもらったクッキーをみつめた。

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