第58話 ひみつ(3月13日)
学校がきゅうに休みになって
人ごみに出かけるなっておかあさんがいうから
ぼくはいえでじっとしている。
ぼくは学校も大すきだけど
いえにいるのは もっとすき。
ゲームをしたり
けん玉をしたり
ジグゾーパズルをしたり
マンガをよんだり
ぼくはやりたいことがあって たいくつしない。
ねえちゃんと トランプしてあそぶのもたのしい。
二人でするババぬきは さいこう。
カードをひくたびに すう字がそろうし
さいごの2まいになったとき
どっちがババかはらはらする。
そんな日がずっとつづいて
あれほど いえにいるようにいってた おかあさんが
「少し、そとにでてきたら。」
っていうようになった。
「こうえんであそぶのは だいじょうぶみたいだから。ほら、まーくんやサトシくんをさそって からだうごかしてきたら?」
おかあさんにそういわれて
ぼくはきゅうに まーくんやさとちゃんにあいたくなった。
でんわしてみようかな?
そうおもったとき
いえのでんわがなった。
おかあさんがまーくんからのでんわだという。
ぼくはいそいででんわをうけとった。
「かずくん!ひさしぶり!」
げんきなまーくんのこえがした。
ひさしぶりにきくまーくんのこえに ぼくはすっかりうれしくなった。
「かずくん、オレもうたいくつでしにそうだよ。これからこうえんであそばない?」
ぼくはうれしくなって、
すぐにしたくをして ちゅうおうこうえんにむかった。
こうえんにつくと もうまーくんがまっていた。
てんきもよくてあたたかい。
ほかにも なん人かの小学生がいた。
中学生もいるかもしれない。
「まーくん、はやかったね。」
ぼくは はしってまーくんのところにいった。
「さとちゃんは、まだきてないね。よかった。」
ぼくがそういうと
まーくんは
「さとちゃんちには でんわしてないんだよ。」
「え・・・!」
ぼくはすこしおどろいた。
てっきりいつもどおり 3人であそぶとおもっていたから。
「ねえ、ねえ、ちょっとこっちきて。」
まーくんはぼくを ゆうぐのの中にさそった。
まーくんのあとにつづいてトンネルにはいる。
ぼくがはいると まーくんがぼくのほうをふりむいて
「はい、これ。」っていって
もっていたかみぶくろをぼくにわたした。
「なに?」
ってちょっとワクワクしながらふくろの中をみた。
そうしたら
かみぶくろの中には
リボンでしばってある小さなふくろがはいっていた。
「な、なに?これ?」
ぼくはちょっとびっくりした。
だってぼくは
かみぶくろの中には
こうえんでいっしょに食べるおかしがはいってるとおもってたから。
「これね、
かずくんが、バレンタインに オレたちにチョコくれたでしょ?
だから、ホワイトデーのおかえし。」
ぼくは おかえしがもらえるなんて おもってなかったから
すこしおどろいたけど
なんだかうれしいきもちになった。
「ありがとう。」
そういうとまーくんは
にっこりわらってから
モゴモゴ小さなこえではなしはじめた。
「さとちゃんといっしょに・・・・ともおもったんだけど
こういうのはむりにさそったりするもんじゃないかな・・・って。
だからさ・・・ないしょっていうわけじゃないんだけど・・・・・・・・。」
ああ、
そういうこと
だからぼくだけこうえんにさそったのか。
たしかに
ないしょってわけでもないけど
わざわざいうことでもないのかな・・・。
そうおもってたら
まーくんがきゅうに
「これは、こい人ごっこなんだよ。」
っていいだした。
「ここに、おれいのチューしてよ。」
まーくんがじぶんのほっぺをゆびさした。
なんかよくわかんないけど
まーくんはぼくにチューしてほしいらしい。
まーくんがニコニコまってるから、
こい人ごっこかぁ・・・とおもいながら
ぼくはまーくんのほっぺにチュってした。
そしたら、こんどは、
まーくんがぼくのほっぺにチュってした。
これは「ごっこ」なんだよね。
でもぼくはなんだかちょっとはずかしかった。
「ありがと。じゃあ、またね!」
ぼくにプレゼントをわたして
ぼくにチューをして
まーくんは
さっさとトンネルのはんたいがわから でていってしまった。
「まーくん、まってよ!いっしょにあそぼうよ!」
って いったけど
まーくんはすばやくはしってかえっていった。
なんだよ
たいくつでしにそうだっていってたくせに・・・
ぼくをこうえんにさそったのは
ただこれを わたしたかっただけだったのか・・・。
ぼくはそっと小さなふくろのリボンをほどいた。
中に
小さなクッキーがなんこかはいっていた。
でこぼこの形のクッキー。
まーくんがつくったのかな?
ぼくはクッキーをたべた。
サクサクしてあまくておいしい。
なんだかとってもうれしかった。
やっぱりこれは
さとちゃんにいわないほうがいいのかな・・・?
ぼくとまーくんに
ふたりだけのひみつができた。
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