第57話 バレンタイン
「かず、もっといっしょうけんめいやってよ!」
ぽき・・・ぽき・・・。
ねえちゃんのいいつけで さっきから
チョコレートを小さくおって ボールの中にいれている。
もう10まいは いたチョコを小さくしているとおもう。
こんなにこまかくするなら いたチョコじゃなくて
アルファベットチョコにすればよかったじゃん。
「ねえちゃん、こんなにたくさんチョコ、だれにあげるの?」
「あーちゃんとしーちゃんとかなちゃんとれにちゃんと・・・・」
「ええ、男子にあげるんじゃないの?」
「かず、今はね、男子になんかやらないの、友チョコっていって
友だちにあげるんだよ。よし、そろそろいいっか。」
ねえちゃんはなべに水を入れて火にかけて
そこにチョコの入ったボールをうかべた。
「こういうの”ゆせん”っていうんだよ。ほら、ここもってて。」
ぼくはいわれたとおり チョコはいったのボールをおさえた。
ねえちゃんが しゃもじでチョコレートをかきまぜる。
チョコレートが少しづつとけていくのがおもしろかたけど
だんだんボールがあつくなってきて
「あち!」って おもわず手をはなした。
ボールがなべのなかで ぐらりとゆれた。
「なんで手はなすんだよ!チョコがこぼれるじゃん!」
「あついんだよ!」
「なによ!」
怒ってボールをさわったねえちゃんも
「あっつ!」ってこえをあげた。
「・・・ねえちゃん、これ火とめていいんじゃない?」
・・・まったく、やけどするとこだったよ・・・。
とけたチョコの中にコーンフレークをまぜて
少しチョコがかたまったっところで
ラップに少しとってくるくるまるめた。
「ねえちゃん・・・ラップじゃまだな・・・手でやってもいい・・・。」
「だめだよ!ともだちにやるんだから、かずの手のバイキンがついちゃう!」
ちぇ。なんだよバイキンって
こっちはてつだってんだぞ。
ちいさなチョコレートのたまがたくさんできた。
ねんどあそびみたい、っていったら またしかられたけど
なんだかほいくえんのころがなつかしくなった。
「たくさんできたね。」
「うん、かず、ありがとう。」
さいごにねえちゃんがおれいをいったから
ぼくはうれしくなった。
「じゅんくんにあげようかな」
ねえちゃんはじゅんくんが おきにいりだ。
おとうとがぼくじゃなくて
じゅんくんだったらよかったっ てなんどもきいた。
「じゅんくんは ほいくえんのときクラスの女子全いんから
チョコもらったっていってたよ。」
「やっぱり!じゅんくん、もてるんだね!かっこいいもんね。」
きっとじゅんくんは
あしたもたくさんチョコをもらうんだろう。
ねえちゃんみたいな高学年の女子からももらうんだろう。
ぼくは
もらえないな。
まーくんとさとちゃん・・・・・
もらえない・・・かな・・・・。
「ねえちゃん。」
「なあに。」
「チョコ、すこしあまらない・・・ちょうだい。」
「たべたくなった?」
「ううん、まーくんと、さとちゃんにあげようかな。」
「バレンタインって女子があげるんだよ。」
「でも、友チョコなんでしょ。
まーくんとさとちゃんはともだちだから。」
「そうだね、ふたりはきっと女子からなんてもらえないだろうしね。」
ねえちゃんがギャハハとわらった。
ねえちゃんがラッピングのふくろをわけてくれた。
しろいハートのもようついてるダッサイの・・・・。
でも、もんくはいわない。またおこられるから。
はりがねのさきにリボンがついていてそれでくちをむすぶ。
ぼくはみどりのリボンとブルーのリボンをえらんで
ふくろのくちをむすんだ
チョコの入った小さなふくろがふたつ。
あしたはこれをまーくんとさとちゃんにわたそう。
びっくりするかな?
よろこんでくれるかな?
もし、いらないっていわれたらどうしよう・・・・。
ぼくは
わくわくどきどき
ちょっぴりしんぱいなきもちで
ふとんにはいった。
はやくあしたになれ。
おわり
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