第56話 としょしつ(こうへん)

オレはよんでいるうちに


だんだんむちゅになってきた。


いじめられた赤おに。


らんぼうなふりをしてちからになってくれた青おに。


いなくなった青おに。


ないた赤おに・・・・・


・・・・・



「まーくん・・・さとちゃん・・・!」


かずくんが


ちいさいけどおどろいたようなこえでオレとおーちゃんをよんだ。


「だいじょうぶ?」



オレは・・・


「泣いた赤鬼」をよんでなみだがでた。


かずくんがしんぱいそうにオレとおーちゃんをみる。


おーちゃんも


「ないた赤おに」をよんでないていた。


オレは ないたことが少しはずかしくて あわてて目をこすって


「かわいそうなはなしだね」っていった。


おーちゃんも オレとおんなじように目をこすって


「かわいそうなはなしだ。」っていった。


かずくんはやさしいかおでおれたちをみて


「そうだね。」っていった。


そして


「赤おにと青おに・・・どっちがかわいそうなんだろう・・・。」


っていった。



二人はともだちなのに。


なんで赤おにはじぶんばっかりにんげんとなかよくしたんだろう。


なんで青おにをわるものにしてしまったんだろう。



「オレは、青おにがかわいそうかな・・・。」


っていったらかずくんが


「ぼくは赤おにがかわいそう・・・。」


ていった。


え、そうなんだ。


オレはちょっとふしぎにおもって


「赤おにがないたから?」


ってきいた。


そしたらかずくんはなんにもこたえなかったけど


かわりにおーちゃんが


「りょうほうかわいそうだよな~」っていった。



「ぼくは かわいそうなはなしは よまないようにしてるんだ。」


ってかずくんがいった。そして


「だって、ないちゃったらはずかじいじゃん。」


ってオレたちをみて わらったから、


オレはおこったかおをしてみせた。


おーちゃんも かずくんをジロリとにらんだ。


かずくんはなきむしなくせに


オレのほうがなきむしだってことにしたいんだよね・・・。


いつものことだけど。


でも、


オレがないたときは かならずやさしくしてくれるのを


オレはしってる。


だから、オレは、かずくんがだいすきなんだ。



そのあとはもう 本もよまずにおしゃべりをした。


もうすぐバレンタインだよね。


だれがたくさんチョコもらいそうかな。


じゅんくんじゃない?


あ、ちくしょーそうだ。まえにほいくえんのクラス中の女子から


チョコもらったっていってたよね・・・。


そんなはなしをしてたから


かずくんはけっきょく どくしょができなくて


本をかりていくことになった。



としょしつをでるとき


かずくんが、またクマの手をにぎって あくしゅした。


「まーくんと、さとちゃんも あくしゅしたほうがいいよ。このクマね、


すごくやさしいの。かなしいきもちのときはギュってするといいよ。」


オレはすこしドキッとした。


かずくんにかなしいことがあったのかな。


「かずくん、かなしかったことあったの?」


ってきいたら


「あったよ。


まーくんとけんかしたときと、まーくんがにゅういんしたとき。


ぼく、このクマのとこにきて あくしゅしたんだ。」


かずくんがクマにギュっとだきつく。


「なーんだ、いつもげんいんは まーくんか!」って


おーちゃんがいった。


「なんだよ、いつもオレって!」っていってみたけど


オレがかずくんに かなしいおもいをさせたとおもうと


かわいそうなことをした・・・というきもちになった。



ともだちにかなしいおもいをさせるとかなしいんだな・・・。



そうおもうと


もしかしたら、青おには、


赤おにがかなしんでるとかなしくなるから


赤おにのためにわるもののふりをしてくれたのかな・・・・って


ちょっとおもった。


赤おにがたのしかったら


青おにもたのしかったのかな・・・・


・・・・


かんがえてるうちにゴチャゴチャしてきたし


かずくんもおーちゃんもいっちゃったから


オレはクマにバイバイって手をふって


はしってあとをおいかけた。



オレもこんど かなしいことがあったら


クマにあくしゅしてみよう。


ほんとうにかなしいきもちがなくなるのかな?


こんどかなしいことがあったらためしてみよう・・・・。


オレは


かずくんとおーちゃんにすぐにおいついて


いっしょにきょうしつにもどった。





                              おわり

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