第36話 すんだくうき(ずこう)

先生が


いろんなあきがあるとおしえてくれる。


「べんきょうのあき」


「どくしょのあき」


「げいじゅつのあき」


「うんどうのあき」


「しょくよくのあき」


オレはふーん・・・ってきいていた。


このまえのマラソン大会で「うんどうのあき」はおわって


いまは


「げいじゅつのあき」なんだって。


ずがこうさくとおんがくのじかんがすこしふえた。


「体いくとずこうとおんがくのどれがすき?」


ってきくと


おーちゃんは「ずこう」っていった。


かずくんは「体いく」


オレといっしょ。


でもおんがくもずこうも


べんきょうよりはぜんぜんすき!




いま、ずこうのじかんはハロウィンのかそうをつくっている。


「ほら、これつけたら、かっこいいでしょ?」


おーちゃんは


ずこうがとくいだから とてもはりきっている。


おおきなクラフトしで


じぶんがきる いしょうをつくっているところ。


オレとかずくんも おーちゃんとおなじものを


おそろいでつくっている。


「お、いいね」


オレは おーちゃんのアイディアをきいて


みようみまねで かざりをつけていく。



かずくんは


「どうするの?」


「これでいい?」


「うまくできない・・・・!」


っていって おーちゃんにすごく てつだってもらっている。


かずくんは きちんとしすぎてるから


ちょっとでも まがったり ちがったりすると きになるみたい。


「そんな、きちんとしなくても、だいたいで いいんじゃない?」


っていうと


「まーくんは だいたんすぎる。これじゃおんなじにみえないよ」


っていいながら、またむずかしいかおで かみをにらんだ。


「たしかにね~」


おーちゃんがかずくんのてつだいをしながら


ぼくのいしょうをみて


わらっていった。



先生がにこにことちかづいてきて


「大のくん、あんまり手つだわないでね。」


っていったあと


「3にんでおそろいなんだね。でも少し ちがうところもつくって


こせいをだしたほうが おもしろいよ。」って


やっぱりにこにこといった。



オレたちは「はい」ってへんじをしたけど


かずくんは 先生がむこうにいってから


「ぜったい、まったくおんなじほうが いいとおもうけどな・・・」って


ってちいさなこえでいった。


「3人でおんなじだとうれしいじゃん」ってわらっていうから


オレも


そうだね・・・っておもった。



「じゃあさ、ふくはおなじくして おめんはそれぞれにする?」って


おーちゃんがいった。


「オレは こわいおめんにしよう」っておーちゃんがいった。


「オレも!こわいのがいいな。ゾンビかガイコツ!」


オレがいうと


「ぼくは・・・・カボチャ・・・にしようかな」ってかずくんがいった。


「かずくんこわがりだもんね」っておーちゃんがいったら


「こわいかおのカボチャにするんだ」と


かずくんがちょっとむくれていった。



おーちゃんがクレヨンでコウモリのえをかく。


かおだけじゃなくて はねもぜんぶ。


それをおめんにするといった。


ていねいにいろをぬってはざみできりぬく。


すごくうまい。


おーちゃんは さらさらとテレビの工さくばんぐみのように


なにもかもが きれいにすすんでいく。



かずくんは


カボチャのかたちをかくのに てまどって


なにいろにしようか すごくゆっくりかんがえて


とてもていねいに かいている。


はざみも なんだかぶきようそうに カクカクかみをきっている。


かずくんは 左ききだから ぼくたちとちがって


えをかくのも かみをきるのも たいへんなのかもしれない。


ちいさくてぷっくりした手が もたもたして


あかちゃんみたいだとおもった。



オレはゾンビのかおをかいた。


だけど かおだけだと あんまりゾンビっぽくない・・・。


おーちゃんのまねをしてからだもかいてみた。


かずくんがぼくのをみて


「ねーまーくん、からだもかくと おめんにしたときへんだよ!」


っていった。


「だって、おーちゃんだってコウモリのはねまでかいてるじゃん。」


「それは、コウモリだからいいんだよ。ゾンビは全しんをかくと 


おめんっぽくないし・・・。ふつうのおばけにしたら?」


「手がこうなって、ベロ出してるやつでしょ?それ、ぜんぜんこわくないじゃん!」


オレがおばけのまねをしていうと


「まーくんもこわがりだから ちょうどいいじゃん」


ってかずくんがいった。


オレはちょっとムッとした。


「かずくんのほうがこわがりじゃん!」っていいかえしたら


かずくんがあっかんべーをした!



かずくんはいつもこうだ。


じぶんだけがこわがりなのが くやしいから


オレまで こわがりなことにするんだ!


かずくんは さくらの木もこわいし セミもかカブトムシもこわいし おばけもこわいじゃん!!


おれはすこしおこって


かずくんをむしして


ゾンビはやめてガイコツのえをかいた。



ちょっとおこっていたせいか


ガイコツをきるときハサミがゆびにあたった。


「いたっ!」


あわててゆびをみる。


だいじょうぶ。きれていない・・・・とおもったら


人さしゆびのさきか らじんわりとちがにじんだ。



かずくんとおーちゃんがおどろいてオレをみる。


かずくんがポケットからサッとティッシュをだして


オレのゆびにまきつけておさえてくれた。


ぶきようにかみをきっていたあかちゃんみたいな手が


ティッシュのうえから


オレのゆびをギュッとにぎった。



「おさえて」


そういって手をはなしたかずくんは


「先生!あいばくんがゆびをきりました。」


って大きなこえで先生を呼んだ。


そして


「だいじょうぶ?」って


とてもしんぱいそうなかおをしてきいた。



先生がきて きずをみて


「ほけんしついくまでもないね。」といって


水どうのところで水でゆびをあらって


ばんそうこうをはってくれた。


そして


「ハサミつかうときはきをつけてね。」


とちょっときびしくいった。



「あーよかった。まーくんのゆびが ざっくりきれたら どうしようかとおもった。」


ばんそうこうをはってもらって もどってきたオレに


かずくんがいった。そして


「いたい?」


しんぱいそうに オレのかおをみた。


「すごくちがでてびっくりした。」


おーちゃんが


「そんなにちはでてなかったよ。」


っていった。


「そうだった?」ってまたかずくんがいった。



オレも ちはすこししかでてなかったとおもった。


きっとかずくんはこわがりだから


たくさんちがでたようにみえたのかもしれない。



それでギュッ・・・ってオレのゆびをおさえてくれたのか。



オレはおこってたきもちがなくなった。



かずくんは こわがりでしんぱいしょうだから


あんまりしんぱいかけないようにしないとね・・・。



「まーくん、ガイコツうまいじゃん。」


かずくんがオレのガイコツのえをみてにっこりわらった。


「そう?」


オレはうれしくなって とちゅうだったハサミのつづきをした。


こんどは ゆびをきらないように しんちょうにきった。


かずくんがそれをみて


じぶんのおめんをまたつくりはじめた。



いしょうやおめんが かんせいして


3人そろって かそうするのが


とてもたのしみだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る