第26話 むしとり

「ここは、カブトもクワガタもなんだっているよ。ほら、もってみて。」


おにいさんがカブトムシをさしだしたから


オレは手をのばした。


おにいさんが手にカブトムシをのせてくれた。


オレのてのひらで もぞもぞうごくカブトムシ。


ぴかぴかひかってる。なんてきれいなんだろう。



かずくんがオレのすこしうしろにきて


いっしょにカブトムシをみた。


ジーっとカブトムシをみたかずくんは


オレのみみのそばで


ぴかぴかひかって、きれいだね・・・っていった。



「ここもって。」


おにいさんがカブトの小さなつのをゆびさした。


オレははんたいの手で そっとつかんだ。


カブトムシのおもさがつたわる。


かずくんもカブトムシが ぴかぴかきれいだといった。


うれしかった。




「さとちゃん、おれにも!」ってまーくんがいうから


オレはこんどはまーくんにわたした。


「わー、すごい!!ほんものだよ!!」


まーくんもすごくかんどうしていた。


「はい、かずくんも!」


まーくんはかずくんにもかぶとをたそうとしたけど、


かずくんはぶんぶん大きくくびをふって手をせなかにかくした。



かずくん、さわるのはむりなんだね・・・。



「なんだ、きみはむしがこわいのか?」


おにいさんはそういってわらうと


まーくんからかぶとむしをうけとった。


「きみたち、せっかくむしかごもってきたけど、つかまえないで、木にかえしてね。」っておにいさんはカブトムシをまたさっきの木にもどした。


「みんながね、どんどんつかまえてもっていっちゃうと、カブトムシがいなくなっちゃうからね。」


そして、オレのむしかごをみて


「そのセミもここでつかまえたんでしょ?にがしていってね。」っていった。


オレのつかまえたせみはミンミンゼミ。そのセミをみて


「うかしたばかりかな?はねがまだすごくきれい。」


っていった。


そして、かずくんをみて


「なんだか、きみみたい。きみもなんだかすきとおってみえるよ。」っていった。


たしかにかずくんはまいにちいっしょにあそんでいるのに


あんまりひやけもしてなくて、うでがすごく白い。


かおも白くて、


ほんとうに


すきとおるもみいなんだ・・・。



そしたら、


いままでだまっていたかずくんが、


「ぼくは、セミとなんて にていない!」って小さなこえでいったから


おにいさんがまたわらった。




おにいさんのなまえは


たいち。


このこう校のひとなんだって。


むしが大すきで、こんちゅうぶにはいっていて


なつやすも中も まいにちむしを みにきてるんだって。


「この林の中には こんちゅうぶの人いがいはだれもこないから、


きみたちがいて おどろいたよ。」


「ちょっとおいで。まだげんかんあいてるかな?」


たいちおにいさんはぼくたちをこう校のげんかんにつれていった。


げんかんをはいるとたくさんのくつのロッカーがあってそのむこうに


じどうはんばいきがあった。



「どれでも、すきなのひとつづつおごってあげる。」


たいちおにいさんがそういった。


かずくんがすぐに


「ぼくたち、すいとうがあるからいいです・・・・。」ってことわった。


「えんりょするなよ。えっと、きみたちをこわがらせちゃったし、それから、せっかくみつけたカブトやセミをにがしてっていったおわびだよ。」


っていわれて


まーくんが


「ありがとうございます!」っていってジュースをえらんだ。


かずくんも


そんなまーくんをみて


ちいさなこえではずかしそうに


「・・・・りがとうございます。・・・ぼくは・・・これ・・・。」


ってジュースをえらんだから


オレも


「ありがとうございます。」ってひとつえらんだ。

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