第6話 七夕祭り

次の日、目覚ましが鳴ってないのに目が覚めた。

まだ七夕祭りまで12時間はあるのに、

心臓の音はいつもより早い気がする。

隣に置いてあるスマホに手を伸ばし、

寝ぼけながらラインを開く。

そこには3件のラインが入っていた。

健吾とお母さんと光だけだ。

もっと陽キャで友達が多かったらきっと

100件は超えるんだろうなー。

「光輝、誕生日おめでとう」

「おい、誕生日おめでとう。これからもよろしく」

「お互い誕生日だね。ハッピーバースデー君と私」

それぞれ特徴が出ていてわかりやすい。

光は僕と同じ今日が誕生日だ。

光に「ハッピーバースデー僕と君」と送り、

体を起こした。

朝ごはんを食べていた。

その時、電話が鳴り響いた。

電話番号はお母さんからだ。

「もしもし。何のよう?」

「誕生日おめでとう。明日帰れそうだから帰るね」

「それだけ?」

「うん。3ヶ月ぶりだね。早く会いたいなー」

「そう?」

「光輝は冷たいなー。ずっと反抗期じゃん」

「べつに。これが普通だよ」

「じゃあバイバイ」

明日か。

お母さんが帰ってくると必ずディナーが豪華だ。

何を食べるのか。それだけを考えていた。

時計は朝の9時を指していた。

まだ七夕祭りまで時間がある。

早く行きたい。光に会いたい。楽しみすぎて

時間の流れを遅く感じた。

期末テストが来週に控えてるので

勉強をすることにした。

僕の好きな教科は地学だ。

僕の学校では入学してすぐに化学か地学を選ぶことに

なっている。

地学の教科書を開いた。

今回の試験範囲は太陽系だ。

星についての話もあったのでそこを読むことにした。

星や太陽について勉強していると時間は

あっという間に過ぎ去っていった。

11時を回り、お昼は商店街で食べることにした。

リュックを背中に背負い、チャリを漕ぎ始めた。

空を見上げると青い空が一面に広がっており、

今日は今までで1番の星が見れそうな気がした。

商店街に入ると笹の葉が天井にぶら下がっていた。

その短冊の中に「プリキュアになりたい」

「消防士になりたい」などの願い事があった。

何で短冊に将来の夢を書くのか。

それは僕の人生のリサーチクエスチョンだ。

毎年、七夕はあるのに。

そんなことを言っていたらどうせ夢がないと

言われるんだろうけど。

ラーメン屋が見えたのでそこに入ることにした。

「いらっしゃいませ。何名様ですか?」

元気な店長がやってきた。

「1人です」

「そうか。こっちの席にどうぞ」

席に誘導され、座りメニューを開いた。

そこには誕生日の人半額の文字があった。

半額か。

「すいません。きょうが誕生日なので

バースデーラーメン1つ」

「今日が誕生日って最高だね」

「はい」

あまりにも店主のノリが良すぎて

ついていけなかった。

「今日の七夕祭り行くのか?」

「彼女と一緒に行きます」

「彼女か。俺にも彼女がいたんだけどなー」

それから20分ぐらいずっと店長の彼女の話を

聞かされた。僕はその話を流しながら教科書を

読んだ。

「ハッピーバースデートゥーユー。

はい。できたよ。バースデーラーメン」

それは卵、海苔、チャーシュー5枚、めんま、

ネギの全てが入っており、ボリュームも

普通のラーメンの2倍近くあった。

これで半額は安すぎる。

まずはスープを飲んだ。

スープは少し濃かったが、美味しかった。

一口飲むと止まらなくて、いつのまにかスープが

半分になっていた。もちろん、麺も美味しかった。

その食べている時間は本当に幸せで

ただ自分が今日誕生日だと言うことだけ考えていた。

「ごちそうさま。めっちゃ美味しかったです」

「だろう?また来年バースデーラーメンを

食べにおいで」

「わかりました。あと一つだけ聞いていいですか?」

「良いぞ」

「今日告白するんですけど、コツってありますか?」

店長は少し考え込み、

「うーん。コツは無い。自分の相手への気持ちを

そのまま言葉に乗せれば良いんだよ。

かえってプレゼントとかを渡すとそっちに

目が入ってしまうから、言葉だけで行く。

好きだ。それだけを伝えればきっと思いは届くよ」

店長の言葉を聞いて気持ちが軽くなった。

「ありがとうございました。来年は彼女と来ます」

「待ってるよ」

まだ1時過ぎで約束の4時には程遠い。

何をしようか。考えていると、占い屋があった。

珍しいなあ。僕は怪しげな占い屋に

入ってみる事にした。

「すいません」

「どうぞ。こちらへ。1回500円です」

僕はお金を払い、

今日の告白が成功するか聞いてみた。

占い師は水晶玉をずっと見て

「見えました」と突然言って、

占いの結果を話していった。

「星と花が咲き乱れる時、あなたの願いは

叶います。ラッキーアイテムは赤い石です。

赤い石を持つ事で願いが叶うでしょう」

赤い石?何を言っているのか分からなかった。

「結局今日はうまくいくんですか?」

「時の流れに身を任せ」

「どういうことですか?」

「これ以上は言えません」

意味がわからない。これで500円は高すぎるだろ。

そう思いながら外に出て仕方なく、

七夕祭りの会場に行く事にした。

まだ早すぎる。きっと光も来てないだろう。

学校に着くと、「おーーい」と声が聞こえた。

見てみると、そこには光がいた。

「早くない?」

「そっちだって早すぎでしょ」

僕たちは笑い合った。

「私、今日短冊に書くこと決めてるんだ。

当ててみて」

光が書くこと。大体高校生の大半は

彼女がほしい。彼氏が欲しい。リア充になりたい。

ばっかりな印象がある。また、ある人は

お金が欲しいとも書いていた。

「彼氏が欲しいとか?」

「違うよ」

「お金が欲しい?」

「違う」

「じゃあ何なん?」

「教えないよ。当てるまで。君は何にするの?」

「僕は……」

昨日の夜、ずっと考えたが全然浮かばなかった。

お金は別にあっても使わないし。

勉強はできてるし。

彼女は……。

「秘密」

「少し早いけど、屋台に行こうか」

「うん」

僕たちは屋台に向かった。

屋台は去年まではわたあめとポテトとスーパーボール

すくいの3つしかなかった。

そこで僕たちは話し合って新たに1つ提案した。

その1つが射的だ。

射的の的をどうしようかと考えていた時、

ある会話が頭をよぎった。


『星にも寿命はあるんだよ』

『そうなの?命って生き物だけじゃ無いの?』

『あの青い星は生まれてすぐの赤ちゃんで

あの赤い星が歳をとったおじいさんの星なんだ』

『じゃあ星って死ぬの?』

『うん死ぬよ』

『星は200万年生きるらしいよ』


そして生まれたのがスターシューティングだ。

赤い星と青い星と黄色の星の3つの的がある。

青い星は1番小さく、ポイントは10点。

黄色の星は普通の大きさでポイントは5点

赤い星は1番大きく、ポイントは2点で、

3回やって7点超えれば賞品をもらえる。

12点いけば豪華賞品。

15点いけば、豪華賞品を2つゲットできる。

そんな屋台を企画した。

その屋台には沢山の人が並んでいた。

「射的しに行こうぜ」

「私、星が好きだから。打ちたくないの」

まさかの解答に頭が追いつかなかった。

「そうか。じゃあ良いや。見に行くだけ見に行こう」

「うん」

少しずつ近づいて行くと、

「あーー。あと少しだったのに」

「どんまい」

聞き覚えのある声だった。

「健吾?」

「おーー、光輝。彼女と行けたんだな」

「彼女じゃ無いし」

「2人で来る=彼女だから」

「意味がわからんし。健吾も彼女とどう?」

「めっちゃ楽しいよ」

後ろを見ると光と天音が楽しそうに話していた。

「そうだ。これから4人で行動しない?」

「良いよ」

光と話をして、4人で行動することにした。

それからスーパーボールすくいやポテトを買って食べたり、屋台で色んなことをして遊んだ。

そして、メインイベントのグランドに向かった。

「まずは短冊だな」

先に健吾から書きに行った。

何を書いたのか。気になったが、

教えてくれなかった。

天音も書き終わり、僕の番が来た。

書くことはただひとつしかない。

僕のペンは勝手に動き始めた。

僕が書き終わった後に光が書いて、

笹に短冊を飾りに行った。

「これから花火を始めます。

カウントダウンをよろしくお願いします」

アナウンスが鳴り響き、いよいよ花火が始まる。

みんなで10からカウントダウンを始め、

「3.2.1」

0と同時に星形の花火が夜空に咲き誇った。

願い事を花火に託すことで、彦星と織姫に

届くと言うのがこの祭りのルールだ。

だからみんな、花火を見ずに目をつむり、

願い事を言ってから花火を見るのが普通だ。

僕も頭の中で願い事を言った。

「告白が成功して光と付き合えますように」

目を開けると花火が「早く告れよ」と

言っているような気がした。

いつ告るか。どこで告るか。

健吾を見ると健吾は僕を見るなりウインクをした。

「がんばれ」そう言っている気がした。

今までのアドバイスを振り返った。

『自分の相手への気持ちを

そのまま言葉に乗せれば良いんだよ。』

『恋はアタックだよ。失敗することを恐れずに

ただアタックするだけ』

『時の流れに身を任せ』

そうだ。相手への気持ちをストレートに伝える。

失敗することを恐れるな。

今しかない。

花火が終わったと同時に僕は大きく息を吸って

「光さん、あの……」

「何?」

「君と初めて出会ったあの日からずっと好きでした。

僕と付き合ってください」

全て出し切った。振られても良い。

「は、はい」

それを見ていた周りが拍手を送った。

え?え?まだ信じ切れなかった。

「ほんとうに?」

「私も光輝君のこと好きだから」

僕の顔は燃えるぐらい熱く真っ赤になっていた。

「光輝。おめでとーーーー」

健吾が抱きついてきた。

「ありがとう」

僕たちは立派なリア充になったんだ。

すると、光が

「願い事。もう叶ったわ」と言った。

「何だったの?」

「光輝君と付き合えますように」

やっぱり僕たちは運命なのかもしれない。

そう思った。

「君は何にしたの?」

「秘密だよ」

「おしえてよー」

空には無数の星が輝いていた。

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