第3話 部活動紹介

次の日、学校に行くと、黒板に大きな文字で


今日は部活動紹介です。

自分の入りたい部活を決めておいてください。

今日から体験可能です。


部活動紹介か。

きっと担任が書いたんだろう。

「健吾はどうするの?」

「俺はテニスかな」

テニスか。苦い思い出が蘇ってきた。

僕は中学生の頃、テニス部に入っていた。

健吾がテニス部の誘ったからだ。

初めは練習に追いついていたが、

だんだん追いつかなくなり、結局辞めた。

辞める時の皆の視線はとても怖かった。

四面楚歌のような感じになった。

だからテニスはもうしたくない。

その担任が書いた黒板の下の方に

部活の一覧があった。

どこに入ったら楽しいか。

最悪、帰宅部でも良いけどなー。

運動部はしんどいし、文化部でいいのがないし。

考えても無駄だと思い、部活動紹介に向かった。

面白く、楽しくいろんなことをやってくれる。

特にサッカー部やバスケ部は1番盛り上がった。

全ての紹介が終わり、結局決まらなかった。

「最後に天文部の紹介です。

天文部は今は部員がいないんですけど

星が大好きな人はぜひ入ってください」

天文部か。部活動紹介が終わった放課後、

僕は天文部の顧問の所に無意識に行っていた。

するとそこには光が顧問に入部届を出していた。

「あ!?光輝君だ!!天文部に入るの?」

初めて名前で言われて少し焦った。

「天文部に入ろうと思っとるけど」

光はにっこり笑って

「じゃあこれからもよろしくね」と言った。

少し顔が赤くなった気がした。

2人で先生に連れられて部室に来た。

天文部の部活ってどんな感じなんだろう。

本がたくさんあるのかなー。

望遠鏡はあるのかなー。

そんな期待を持って部室に入った。

しかし、それは一瞬でくつがえった。

ほこりだらけの部屋と数冊しかない本棚、

望遠鏡は倒れていた。

机の上には本が散らばっていた。

僕たちの前には椅子や机、看板などがあった。

「先生……どういう事ですか?」

光が先生に聞いた。

僕も同じことを聞こうとしていた。

「ここの天文部は10年前、20人も部員がいたらしい。

毎日部室に来て、望遠鏡を屋上に持っていて

夜に学校に来て、星を見ていた。

しかし、学校の屋上から1人の女子高生が落下した。

多くの人は自殺と言っていたが、

正確には天文部の先輩からのいじめが原因だった。

天文部は当分部活停止になった。

そこで多くの人が辞めてここを去っていった。

いつのまにか部員はいなくなった。

部活停止は終わったが、屋上はまだ使えない。

さらに天文部は正直言うと人気がない。

それで7年間、誰も来なかったことから、

ここは物置き場となり、行事の看板とかを

置いていたらしい。

その看板は私が貰っとくから、

掃除が終わったらまとめて渡してね。

じゃあ。よろしく」

先生は下へ降りていった。

そんな過去があったのか。

だから使えなかったのか。

光がマスクをして早速部室に入った。

「掃除をしようや」

僕もマスクをして掃除を始めた。

ほうきで綺麗に掃くことから始まった。

その途中、いろんな話をした。

「光輝くんは何で天文部に入ったの?」

「星を見ているとなんだか嫌なこととかを

忘れることが出来るんだよ。

だから星を見ることが好きなんだ。

光さんは?」

「光さんって笑笑。光でいいよ。

私は小さい頃から両親が星が好きで

いろんな話を聞かされて、

星が好きになったんだ。

この世の全ての星は大体知ってるよ」

光。さんを付けないだけですごく呼びづらくなった。

名前を呼び捨てで呼ぶこと。

それは距離が少し近づくことだと思っている。

名前で呼ぶ事は愛し合っている証拠だと考えている。

だからまだ自分は好きでも相手が嫌なら

僕は呼ばないようにしよう。

「僕の両親も星が好きなんだ。

でも、あまり覚えてないけど」

「私たち、気が合いそうだね」

「うん」

掃除もある程度終わり、いらないものを外に出し、

本を元に戻してなんとか

僕の理想の姿に持っていけた。

「これから何をしていくの?」

「先生から聞いたんだけど七夕祭りの準備だって」

「準備だけ!?」

「この時期は」

もっと星を見たりすると思っていたが、

準備だけとは……

そりやー部員は増えないか。

「準備って何をするの?」

「まずは大きな笹を準備して短冊を小さく切る。

あとは屋台とかの企画とか?」

楽しみよりめんどくさいの方が

僕の頭の中では勝っていた。

でも、七夕祭りは楽しみだから、

頑張ろうと思えた。

七夕祭りは年に1回この学校で行われる。

グランドに大きな笹を置いて、そこに短冊を

書いて飾る。そして、最後に花火が上がり、

願いを唱える。それが七夕祭りだ。

屋台もたくさん出るのでとても楽しみだ。

今年の短冊は何を書こうか。

色々と考えていると、光がこっちを見て

「何してるの?」

「願い事を考えてた」

「私はもう決めてるけどね」

「早すぎだろ」

光は黙って外にあった看板を1人で持って行った。

僕も行こうと思ったが、光はいなかった。

無理に行こうとしてまた迷子になったら嫌だ。

光は道を知ってるのかな。

先生に言われたのは地学教室だけど。

僕にはどこにあるかさっぱりわからない。

いつか分かるか。

5分後、光が戻ってきた。

「今日は18時からね」

「何するの?」

「星を見るの」

「どこでするの」

光は窓の向こうを指さした。

「あの天文台だよ」

それはここの地域で有名な天文台だ。

別名は地獄の天文台。

どこが地獄かというと、

階段が300段もあるところだ。

それも螺旋状だから目を回るし。

本当にしんどいらしい。

僕はまだ行ったことが無いので分からないが、

足がボロボロになるのが目に浮かぶ。

「いや。あんな階段無理だよ」

「私は毎日行ってるけど……」

毎日行ってる。その言葉でどれだけ

星を愛しているかが分かった。

僕にも色々と教えてほしい。

「分かったよ。じゃあ天文台の前に行くわ」

「よろしくね」

僕たちは一旦、解散して必要なものを持ってくる

ように言われた。

家に帰って、望遠鏡とカメラ、

お母さんがくれた星の図鑑を持って

天文台に向かった。

着くと、光が叫んでいた。

恥ずかしく無いのか。そう思いながらも自分も

手を振った。

「じゃあ早速登るか」

そこからの30分は記憶になかった。

無心に上がり続けた結果、着いたときには

胸の鼓動が波を打つより早く、息ができないほど

しんどかった。

でも、その苦しみは一瞬で晴れた。

天文台からの景色はとても最高だった。

僕がカメラを構えた時。光が「やめろー」と叫んだ。

「何でだよ。カメラで撮っても良いじゃん」

「カメラで撮ったら、その撮っている1分が

無駄になるよ。記憶を残すより、心に残した方が

良いと思うよ」

光の言葉を聞いて僕はカメラを閉じた。

僕たちは天文台の地べたに寝転がり星を見ていた。

3分ぐらい経っただろうか。

突然、光が

「星にも寿命はあるんだよ」

「そうなの?命って生き物だけじゃ無いの?」

光は目の上の星を指さした。

「あの青い星は生まれてすぐの赤ちゃんで

あの赤い星が歳をとったおじいさんの星なんだ」

青い星と赤い星が輝いていた。

星にも歳があるんだ。

「じゃあ星って死ぬの?」

「うん死ぬよ」

星にも寿命があるのか。

「星は200万年生きるらしいよ」

200万年。僕たち人間にはこんな長い時間

生きることが出来ない。

「星も生きているんだから私たちも

最後の1秒まで生きないといけないね」

「そうだね」

「私の誕生日いつでしょうか?」

突然、クイズを出してきた。

そんなの分かるわけが無い。

でも、星を見ながら言ったって事は……。

「七夕?」

「正解」

光の言葉に僕は唖然とした。

まさか一緒とは……

僕たちは彦星と織姫のように

出逢う運命のようだったのか。

「僕も七夕が誕生日なんだ」

「えっ!?まじで?」

「うん」

「運命だね」

それから5分ぐらい経っただろうか。

無言の会話に光が語り始めた。

「あれがアルタイルだね」

光が指を空にさして言ったが、

僕にはどれがどれか分からなかった。

「どれだよ」

「自分で探しなさい」

僕は仕方なくカバンから星空図鑑を出した。

「それ何?」

光が興味津々で聞いてきた。

「お母さんからもらったんだ」

「お母さんも星が好きなの?」

「昔から星が好きで色んなところに行ったよ」

「えー良いなぁ」

図鑑で探しているとアルタイルの文字を発見した。

それと夜空を見比べてどこにあるか探した。

「アルタイルあったよ」

「その隣にあるのがベガだよ」

ベガとアルタイル。どこかで聞いたことがあるが。

「それって何なの?」

「彦星と織姫のことだよ」

「そうなんだ」

気がつくと20分は経っていた。

「今日はここまでかな」

光が天文台から降りようとした。

その時、健吾の言葉が脳裏を横切った。

『LINEとか交換しないといけないな』

そうだ。ラインを交換しないといけない。

「待って」

光が振り返って不思議そうな顔をしていた。

「LINE交換しようよ」

「あ。そうだね。交換しようか」

QRコードでラインを交換した。

やっと交換できた。

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