第9話 不幸な女

 その女は不幸だった。決して綺麗とは言えない容姿に、薄汚い服、金もなければ仕事もない。女も自分が世界一不幸だと確信していた。


 あるとき、神様が女の前に現れ、こう言った。

「不幸な女よ。私が一つ願いを叶えてやろう。」

女は莫大な富を願った。神様は女に、一生かかっても使いきれないほど多くの金貨を与えた。

 女は喜んで、まず始めに豪邸を買った。自分の顔も整形し、身の回りは高級品で固めた。毎日コース料理を食べ、様々な美男子を家に招いては、関係をもった。女はどこから見ても幸せだった。しかし、女の心は満たされなかった。


 そんなある日、女は可哀想な少女と会った。手足もまともに動かせず、両親にも見放されボロ雑巾のような格好をした悲劇の少女。女は彼女に尋ねた。

「そこの可哀想な子。あなたは何のために生きてるの?」

少女は答える。

「私は自分のことを可哀想だとは思ったことがありません。むしろ幸せだと思っています。」

「なぜ?あなたは愛する人を抱きしめる手も、暖かな大地にふれるための足もないのに。」

「それでも私には子鳥のさえずりを聞くための耳も、愛する人を見つめることができる目もあります。私は持っていないモノよりもはるかに持っているモノの方が多いことを知っています。だから幸せなのです。」


 女と少女はそれきっり会うことはなかった。

きっと女は不幸であり続けるだろう。足りないモノばかり欲しがって、自分を見ようとしないのだから。








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