第5話 色彩

 昔々、世界は白黒だった。というのも、ある魔女によって数十年前に白黒になってしまったのだ。人々は、元の色彩溢れる世界に焦がれ、羨望した。

 そこへ、魔法の杖をもった少年が現れた。杖はそこらの木の枝を拾ってきたかのようなお粗末なもので、彼の外見や服装もきれいとは言い難いものだった。それだけみればとくに特徴のないみすぼらしいだけの少年だったが、一点だけ誰にも持ち得ない特徴を持っているのだ。それは、彼にはちゃんと色彩が宿っているのだ。金色に輝く金髪に、透き通った青い瞳。やがて、彼の情報は国中を駆け回り、とうとう王様の耳にまで届くこととなった。

 王様は少年をすぐさま呼び出し、噂にあった魔法の杖のことを尋ねた。すると少年はこう言った。

「この杖は、元々あった色を元に戻すのではなく、色を自分で決めて与えるんです。」

そう言って魔法の杖をふり、真っ黒なりんごをあっという間に緑に変えた。王様は興味津々な様子で、次々に少年に質問を投げかけた。

「ほう。では自分の色はどうやって決めた?」

「いえ。私は元々自分の色を持っていました。なぜかは知りませんが。」

「根本的な話になるが、その杖はどこで拾った?そしてその杖は他の者でも使えるのか?」

「杖は生まれた時からずっと持っていました。家の家宝みたいなモノだったような気がします。杖は他の人に渡しても、使える人は誰一人としていませんでした。これは直感ですが、色のついた人ではなければ扱えないんだと思います。」

「それなら他の人に色を与えればいいではないか。」

 それを聞いて少年はなるほどと思い、王様に色を与えた。すると王様はみるみるうちに色づいていき、綺麗な金髪に済んだ青い目、色白の肌をした美しい青年となった。

その姿をみて、最初はご機嫌だった王様だったが、徐々にボロ雑巾のような服装をした少年と同じ色彩を持っているのが嫌になり、少年の杖を奪って自分の目の色と肌の色を髪の色を変えた。真っ黒に輝く瞳に太陽のように美しく焦げた茶色、髪は瞳と同じ黒色に、、、、。王様は得意になっていろんな臣下や国民に様々な色を与えた。

 緑の瞳に灰色の瞳、黄色い目。白髪に茶髪に赤髪。白い肌に黒い肌。


 こうして、今では世界はいろんな色を持った人たちが大勢いるのだ。

 

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