第4話 奇病

 あるところに、有名な町医者がいた。聞くところによると、どんな病気や怪我も治せる名医で、彼を訪ねて町に来る人が後をたたないとか。そんなある日、一人の婦人が彼の元へ現れた。

 みたところ、彼女にはそれらしい素振りや外傷はなく、健康体そのものだった。ほかに連れがいるとかと思えば、そうではないらしい。彼女いわく、自分は人にはわからないような奇病にかかっているんだそうだ。

 彼女は最初に自分の身の上話をした。彼女はもともと貧乏で、大変な苦労をしたのだそうだ。年老いた両親の介護に下の兄弟たちの養育費、日々の借金取りとの戦い、、、、。自殺を考えた日もあったという。

 しかし、今の主人に一目惚れをされ結婚してからというもの、主人はいいところのボンボンであったこともあり、生活は一気に明るいものになったとか。両親を介護施設に入れることができ、おまけに養育費を稼がなくても良いどころか、毎日パーティーで散財しても有り余るぐらいのお金を手に入れた。

 それからしばらくして、彼女は奇病にかかってしまった。その奇病というのは、一日の過ごしている時間が極端に短いように感じてしまうというものだった。睡眠時間は依然とあまり変わらないはずなのに、一日の時間が早く過ぎ去ってしまう。そしてどの病院で検査してもなんら異常がない。そこで名医と名高い彼に、検査してもらおうときたわけだ。

 その話を聞いて、彼は彼女に一通りの検査をした後こう言った。

「なるほど。わかりました。この病気はまだ名がつかぬほど珍しい病気です。ですが直し方はあります。」「本当ですか?!ではその直し方というのは、、、?」

「これはシンプルなものでしてね。パーティーなどの催しには出ずに、講習会に参加してください。内容は問いませんし、なんならそこらの学校の校長先生の話でもいいです。なんでもいいですからとびっきりつまらなそうなものに参加してみてください。」

 その次の週、彼に婦人から電話がかかってきた。『もしもし。例の奇病は無事治ったのですが、今度は一日の時間が極端に遅いように感じてしまう奇病にかかってしまったんです。なんとか治していただけないでしょうか。』

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