第20話 彷徨い逢う魂達
佐和田さんが、僕のために知り合いに頼み込んで借りてくれたアパートの一室に、僅かな期間という約束で身を置かせてもらっていた。
僕は、そこのアパートのベットの
この部屋に来た最初の頃は、携帯に遺された ぃちゃんとのメールのやり取りを何度も繰返し読んでいた。それが、
志緒梨がこの世を去ってから、僕は具志堅、佐和田さんも交え三人で昼夜の境もなく酒を飲んで廻り、三日目に家に戻ると、妻が会社からの封筒を手に僕を待っていた。
社長とその家族を含め、この会社は、人としての僕の人格とか人間としての
何も、娘が亡くなり、その次の日にわざわざ郵送という手を使わなくてもいいのではないか、元より僕の方こそもう会社へは行く気などなかった。用は電話でも事の足りることなのに……その上、解雇通知とは別に社長からの恨みの念のこもった言葉が並んだ手紙も同封されていて、妻は一々読みながら、これは本当なのか、と僕に確認を取り、手紙を読み進んだ。しかし、酔いと
後日、僕が今いるこの場所を息子の真樹に連絡をし教えてやると、その日のうちに真樹が荷物を届けに来たのだが、荷物やバッグを開いてみると、その中にミュウがいた。ミュウとしても、とんだとばっちりだろう……そして、僕は、判を押した離婚届を真樹に渡し、持って行ってもらった。今はこの部屋に、ミュウと僕がいて……クックックッ、猫と酔っ払い。アハハ、何だか笑える。
部屋を眺め回しても、あるのはベットの上には寝具に、テーブルの上には煙草に灰皿、BROWN'S MEMORYとオリオンビールの景品の六オンスのタンブラー、それと日に一度は具志堅がやって来て置いていく弁当を、今はミュウがおかずだけを食べている。
僕は、もう何もかも失くしてしまった。僕は、これから何をすればいいんだろ? もう、この世には僕のいる場所なんて何処にもない。
ぃちゃんを失ってからの今の僕を
僕は、その顔を消したくて、グラスのウヰスキーを一息に喉に流し込んだ。すると、ウヰスキーの香りは喉を一気に駆け上ってきて、僕の脳裏に久米島で電話をしていた時に ぃちゃんが咳き込み、苦しさに堪えている辛そうな表情が映った。僕には、彼女のそんな表情など見てはいない筈だが、何故か僕の心に焼きついていた。
この世には、もう僕の居場所なんてない。僕の還るところは ぃちゃんの傍なんだ。そうだ、もう疲れ果て死が来るのを待つのではなく、僕の方から ぃちゃんの許へ行こう……その時、携帯が小刻みにバイブした。ディスプレイを見ると、嘗ての僕の自宅からだ。
「ハイ……もしもし……」
「アッ、お父さん?……」
「アア、なんだ真樹か……何だ、どうした?」
「アッ、もしかして、お母さんだと思った? だとしたら、気まずいんだろうな?」
「ウッ、ウン、まあな、ところで、何の用だよ」
「アッ、ああ、さっきお父さんはいるかって、若い綺麗な人が来ていたよ。その時、お母さんいなくてよかったね?」
「若くて綺麗な人? お父さんには、綺麗な人は或るひとりの人を除いては、心当たりは思いつかないな」
「お父さんの或る人って、もしかして亡くなった人のことを言っているの? そんなにも、その人のことが好きだったんだ?」
「ンッ、ウン、まあな、お前たちには悪いが、そうだ」
「フーン、そうなんだ……俺、お父さんのそういうところ嫌いじゃあないよ。大体、大人っていうのは、多分そういうのを
「ああ、そうだ。俺は自分には嘘を吐きたくはない。それに、自分が幸せになることを常に願っている。それはな……」
「ああ、分かっている。お父さんのいつもいっている、アレだろう? もう耳に
「エッ、何でまた。ややこしくなるのは嫌だなー。そうか、分かった。ありがとう……アッ、そうだ、その人どんな感じの人なんだ?」
「ウーン、それがね。空気っていうか、雰囲気さえよければ……見た目は、超特Aランクって感じかな? プロポーションだって、めっちゃナイスルッキンって感じだよ。お父さんもやるな、って思ったけど、心当たりがないんだよね? 残念だったね?」
「なんだ、今日はお前、何だかよく喋るじゃあないか? 後は用もないのなら切るぞ」
「アッ、ちょ、ちょっと待って。おとうさん、麻美がねミュウに逢いたい、ってうるさいんだ。あいつお母さんに気を使って、本当はお父さんに逢いたいくせに……前にお父さんが入院した時だって、あいつ結構心配していたんだぜ」
「そうか、わかった。真樹、麻美にな、ミュウも麻美に逢いたがっている、って言っておいてくれないか。よろしくたのむよ」
「ウン、わかった。言っておくよ。アッ、そうだ。俺こんど二十歳になるって知っていたかなあ?」
「アア、勿論だ。今度の七月になったらだろう? 忘れるもんか。それまでに、予行演習でもしに行こうか?」
「アア、その時は頼むよ」
「アッ、それと、お前、誰に聞いたんだ。その、亡くなった人のことを」
「アア、お父さんの友達の具志堅っていう人だよ。この前、夕方
「アッ、アア、まあな。真樹、ありがとう。それじゃあ、お前の居酒屋デビューを楽しみにしているからな」
「アア、その時は頼むよ。それじゃあ、お父さんも体には気をつけて、元気でいてくれよ……プツッ」
電話を切って、また僕は前と同じ姿勢でベットに背中を預け、煙草に火を点け、煙を深く吸い込み吐いた。
こんな時って本部の玉城さんや伊平屋の宮里さんたちならどうするんだろうか。それに、具志川の山城さんなら……今の僕には、子供たちに幾ら何らかの期待をされていたとしても、それに応えることなんて出来そうにもない。玉城さんや宮里さんのように、誰か人の為に生きていこうとする勇気さえも僕にはもうない。これからどう生きて行けばいいのか、僅かな希望さえも今の僕には見つからない。唯、今の僕に見えるのは、いつか見た深く暗い海の、あの景色が心の中でうずまいている。
何故か、その海は心の中だけではなく、常に僕の近くで、そのうちいつかは僕を呑み込もうとしているのではないかという、いいようのない恐怖が僕を包んでいる。もしも、その深く暗い海の中に捕りこまれてしまえば、一生僕は光さえ見えず、暗い
誰かが、階段を足早に駆け上がって来る。そして、この部屋のドアの前に来て、ノックをした。
「オーイ、僕だよ。具志堅だよ。此処を開けてくれよ」
何だ、具志堅か……僕は体を起し、ふらつく足で玄関に行きドアを開けた。そこには、両手一杯に袋を抱えた具志堅が立っていた。
「よう、元気だった? ふう、外は凄い雨だよ。沢山買い物をしてきたんだ。温めるだけで簡単に飲めるレトルトのお粥とか、仲村は珈琲が好きだから挽いた豆の珈琲セットに、キャットフードも買ってきたよ。それに後は色々だよ。アッ、車にエーミーを待たせているから……後、何か欲しいものはある?」
「イイヤ、何もないよ。」
「そうか、ウン、分かった。それじゃあな」
「アッ、ちょっと待てくれないか」
「ンッ、なに? 何か欲しいものあるの?」
「嫌、そんなんじゃあないんだ。この前、真樹に会ったんだってな……ウチの息子の真樹だよ」
「アッ、ごめん。僕は、何も……ただ……」
「アッ、嫌、そうじゃあないんだ。唯、具志堅にありがとう、って言いたかったんだ。悪いな、変に気を使わせちゃって、申し訳ない」
「アッ、ああ、そうか。いいんだ、チケーンネーンヨー(どうってことないよ)それじゃあ、エーミーが待っているから行くな?」
「ウン、ありがとう。気をつけてな」
具志堅は、ドアを閉め来た時と同じように足音を発て足早に階段を駆け下りて行った。
僕は、入口に具志堅が置いていった袋をテーブルの側に移し、弁当の食べ残しをゴミ箱に入れて、空になった弁当の容器にキャットフードを入れミュウの前に差出すと、ミュウはガツガツといつもの訳の分からない言葉(ウミャイ、ウニャイ)を吐きながら食べた。
ミュウのそんな小さな至福を見ていると、時を忘れて見てもいられたが、ミュウは粗方キャットフードを食べ終えるとベッドの上に戻り体を丸め目を閉じた。その間に、僕はウヰスキーを飲んでいたが、ミュウが小さな鼾(いびき)を掻く頃には四分の一はあったボトルの中は空になり。具志堅が買ってきた袋の中にBROWN'S MEMORYが入っていたのを取り出し、封を切りキャップを開けグラスに注いでいた時に気づいた。ボトルのラベル側とは反対側に白のマーカーで〝ナンクルナイサー(何とかなるさ)〟に〝チバリヨー(がんばれ)〟とあり。その下には〝佐和田一家、治、つばさ、絵美&茂雄〟と寄せ書きがあった。
僕は、グラスのその酒を一気に飲み込み、天井を仰いだ。目頭が熱くなり、上を向いていないと涙が止めどなく出てきそうだったからだが、しかし、涙を止めることは出来なかった。具志堅や佐和田さん一家の気持ちが身に
こんな僕に比べ、この世に ぃちゃんはもういないのだが、過去の未来での ぃちゃんは、もっと辛かったのだろうと思う、自分を心配してくれる人たちがいて、そのひとたちを残し僕の後を追うことも出来ず、もう彼女に残されたものは、唯ひとつ〝僕がいつかは還って来てくれる〟という奇跡だけが彼女の支えだったのだろう、と思うのだが、その思いに至ると、やはり今の自分自身が無性に情けない、という思いに駆られる。
煙草に火を点けようと、ポケットに手を入れたが、ライターではなく何かが指に当たった。取り出すと、それは玉城さんに貰った〝時の石〟だった。僕は、その石を強く握り絞めた。玉城さん、僕はこのまま、これからの時間、何を堪えていけばいいのだろう? この世のどの場所にも、もう居場所のないこの僕に生きる価値などあるのだろうか……手の中の石からは、何も感じられない。僕は、石をテーブルに置き、灰皿の側にあったライターで煙草に火を点け、深く吸い込むと煙草の煙は僕の全身を駆け巡り、酒の酔いをより
ベッドに寄り掛かったまま、顔を天井に向けると、何故か僕のいるこの部屋の空間までが捻じれて行くのが見える。天井はゆっくりと捻れ、うずを巻き始めた。まるで、そこがあの深く暗い海の入口であるかのように……今にもそこの扉は開かれ、聴こえはしないが、その奥に潜んでいる者たちの声は僕の意識の中に「
その時、寝ていたミュウが起き、ベッドの上で身を構え、ドアの方に目を凝らし唸りだした。全身の毛が逆立っている。何かいるのか? 僕も、ドアの向こうに神経を集中してみた。すると、外の雨の音に紛れ聴こえて来る。階段を、誰かが上ってくるようだが、足取りがとても重く、ゆっくりとした速度で一段一段と階段を昇ってくる。
そして、その足音は遂にこの部屋のドアの向こうで止まった。だが、数秒間のあいだ何も聞こえなくなり、僕の耳には雨の音だけとなり、外には誰かいるのか、とドアに意識を集中し気をむけたその刹那、ドンドンとドアを叩く音がした。その音は、まるで僕の魂を迎えにきた死神の合図に思え、背中に冷たい恐怖が走る。
更に、またドアを叩く……僕は、酔いと緊張から声にならないかすれた声で応えた。
「開いているよ……かぎ、鍵なんか掛けていないから……」
それでも、またドアをドンドンと叩く。
僕は重い身体を起し、ドアの方へ近づこうとし、立ち上がった瞬間よろめき、身の回りに何も寄り掛かり支えとなるものが何もなく、ドアを目の前にし、思いっきり前のめりした格好で倒れてしまった。
立ち上がろうとして手を床に着けた時に、外の雨の音と共に外の冷気が流れこんできた……ドアが開いたのか。
僕が、頭を起こそうとし見たものは、雨に濡れて立っている白い布だった。その濡れた布から雫が玄関の床にぴちょんぴちょんと
「松本? 松本小夜香?……なんで? 何で松本、小夜香が?」
僕の前に立っていたのは、松本小夜香だったが、彼女の長い濡れた髪の
「ま、まさか……まさか、ぃちゃん? ぃ、ぃちゃん、なの?」
目の前に立っている女、松本小夜香は頬をゆるめにこりと微笑み、ポツリと言葉を洩らした。
「たぁちゃん……ただいま」
その刹那、彼女は床に崩れ落ちた。
僕は、重い体も忘れ擦り寄って行き、彼女の上半身を起し、彼女の目を見た。
「本当に、ぃちゃんなんだよね? ぃちゃん、おかえり……」
僕は、彼女の上半身を思いっ切り強く抱き締めた。離れ離れになっていた分の想いを込めて……。
どれくらいの時を僕は ぃちゃんの、嫌、松本小夜香の体を抱いていたのだろう。
その後、僕は彼女の濡れた髪をバスタオルで拭いてやり、彼女が濡れた服を脱ぎ変えるからと僕は後ろを向き、具志堅の置いて行った袋に缶のココアがあったのを見つけ、それをジャーポットに水をいれココアを温めていた。
「たぁちゃん、こっちを見て……」
僕が振り向くとそこには、立ったまま何も着ていない松本小夜香の体があった。
「たぁちゃん、これが今の私の体、見て……」
しかし、僕は見ず、濡れた自分の服を脱ぎ立ち上がり、彼女を抱き締めた。
「僕は、ぃちゃんの体がどうであろうと、どうでもいいことなんだ。僕が、愛したのは ぃちゃん自身、ぃちゃんの魂なんだから……こうして、ぃちゃんを抱き締めていると ぃちゃんの魂に触れているように感じるんだ……おかえり、ぃちゃん。やっと僕の腕の中に還ってきたんだね」
「たぁちゃん、ただいま……嬉しい。私、やっとたぁちゃんの腕の中に還ってきたのね」
ジャーポットのお湯がグツグツと沸いてきて、僕は彼女に、バッグの中から彼女には少し大きい僕のシャツを取り出し、着せてあげた。
それから、ぃちゃんは温めた缶のココアをすすりながら、今迄の
そして、松本小夜香が言うには、この世には男として産まれるはずが女性として産まれ、また、その逆に女として産まれるはずが男性として産まれてしまい、その悩みを人には言えず、とても苦しんで生きている人たちが少なからずいて、その人たちには手術という最終の手段がまだ残されているが、松本小夜香の場合はとても複雑で、先ず生まれるはずの場所が時空を超えたところにあって、この世ではないとのことらしい。それに、松本小夜香には、たまに時空を超えたところから声が聴こえて来るらしい。その声はとても懐かしく、とても愛おしい人の声なのだと言う。だから、彼女はどうしてもそこへ行かないといけないらしいのだ。
それから、彼女は ぃちゃんにお願いをしたのだと言う。それは、松本小夜香の両親のことで、このまま二人を悲しませたまま逝って仕舞うというのが、とても心残りなのだと言う。そこで、志緒梨に、この世にまだやり残したことがあるのならこの体を差し上げるが、それには約束があって、松本小夜香に代わり、その両親を大切にするというのが条件なのだ、と言う。そこで、志緒梨が約束をすると誓うと、彼女はただ微笑みうなずき、そのまま天上へと松本小夜香の魂は昇って行った。そして、志緒梨の魂は自殺を
話し終えて ぃちゃんは、缶の残りのココアをゴクリと飲干し、僕に
「アッ、ああー。貴方が、あの怪盗ミュウ君ね? 初めまして、私がマドモアゼル・ポアロよ。よろしくね」
ぃちゃんが、ミュウに顔を近づけるとミュウは ぃちゃんの頬に顔をすりすりした。
「アッ、そうだ。ネエ、たぁちゃん、今何時?」
僕は、携帯を開けてディスプレイの時刻を見た。
「今は、九時五十一分だよ。どうかしたの?」
ぃちゃんは、僕の携帯電話を借りて、松本家に慣れた手付きでポツポツとボタンを押して掛け、何やらそこのお母さんらしき人と話をして電話を切り、僕に携帯を返した。僕の、不思議そうに見つめる目に気づいたのか、こっちを見て微笑んだ。
「どうかしたの? そんな目で見て……私、何か可笑しい?」
「ンッ? ウン。だってね、向こうに電話を掛けるのに慣れているようだし、その上、本当にそこの娘さんのようだったから……」
「エエ、不思議でしょう? 私が、小夜香さんの体に入った時にね。その時、彼女の残っていた意識までも、私頂いたみたいなの」
「エッ、そうなの? ちょっと、聞いていい? 確か、ぃちゃんは志緒梨という体がなくなる少し前に、未来からの ぃちゃんの意識が入っていたよね? っで、今も?」
「ウフフ、エエ、今もよ。今は、私の中に三人分の意識があるの。不思議ね? ああ、そうだ。小夜香さんの意識の中にね。たぁちゃんへの想いがあるのは、なんで?」
「エッ、そんなこと、僕に聞かれても知らないよ……アッ、そうだ? それって、ぃちゃん、自分自身の意識に聞けばいいだろう?」
「エヘへ、ごめんね。ちょっと、たぁちゃんをからかっちゃった……あのね、彼女は、たぁちゃんへの特別な想いがあったのは本当よ。でもね、私も彼女の意識に残っていた記憶の中の彼女が聞いていた時空を超えて聴こえて来る声を聴いたの……それがね、聴いた途端に、アッ、この声って、たぁちゃんの声だって思ったの、それとたぁちゃんの持っているオーラのような空気っていうかそんな感じ。だから、彼女はたぁちゃんに特別な感情を持っていたんだと思うわ」
「そうなんだ? そう言えば、僕もね、彼女が面接の電話をしてきた時にね。何だか、何処か懐かしい感じがしたんだ。それは、なんでだろうね?」
「それは、たぁちゃん、自分の胸に手を当ててよーく考えてみてよ。美人は声で分かる、って言うから……それに、その時、私は一人の
「そんなこと言われても……僕には、彼女に特別なシンパシーなんて、なかったよ」
「アッ、そうだ。たぁちゃんは気づいた? 私が小夜香さんの体に入って気を失って少しして、ほんの少しだけ目が少し覚めたの……その時、たぁちゃんとすれ違ったの、分かった? たぁちゃん、私を見ていたから……」
「ああ、やっぱり? そうだったんだ。病院のエレベーターだよね? 覚えているよ。どうして、僕は、松本小夜香なんかに、こんなにも気がいってしまうのか、すごく不思議でしょうもなかったんだ……でも、これで分かったよね? 僕は、どんなに ぃちゃんと離れたとしても、絶対見つけ出すって」
「ウーン、なんだか、悔しいけど……嬉しい。私の魂が、また何処かへ行ったとしても、絶対に見つけてね。絶対にぜったいよ」
「ウン、勿論さ。絶対にぜったい見つけ出すからね」
僕たちは、豆電球だけを点けベッドに入り、お互いの顔を見つめ合いながら抱き合っていた。
「 ぃちゃん、おかえり。やっと、僕の腕の中に還ってきてくれたね」
「ウン、ただいま。たぁちゃん。もう、私を離さないでね? ずっと、ずっとよ?」
「ウン、もう二度と絶対に ぃちゃんをずっと、ずっと離したりなんかしないからね」
外では雨が降り続き、僕たちふたりを、雨はこの世の全てのしがらみから
僕たちは裸で抱き合い、お互いの魂に触れ合っている……今、僕の腕の中には、ぃちゃんという幸せがある……
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