第19話  深い絶望



 翌月曜日、僕は那覇の泊港から出る朝一の久米島くめじま行きのフェリーの甲板上にいた。

 僕の向かう船の先には、鉛色をした厚い雲がこの世にふたをしたかのような暗い真冬の空があり、その下には空の色を映し更に色を濃くした海がひろがっていた。僕の目にはこれからの未来を暗示しているかのように、よどんだ景色となって映っている。そして、海が荒れ、船が突き進むのをはばむかのように、大きなうねりを伴ない、船が波の谷間に落ちる度に大きな重力を受け、その後飛沫が冷たい北風に雑じり厚手のハーフコートのフードで隠した僕の頬にまで吹きつけてくる。

 そんな波のあおりを受け大きく揺れ続ける中、僕はベンチに腰を深く押し付けながらも、どうにか志緒梨にメールを送った。その後、船のへりのパイプに両肘をあずけ、ポケットから買っておいた温かい缶コーヒーを取り出し飲みながら冷たい冬の海を僕はただ観ていた。

 目の前の海は、深い冬の色をし、大きくうねるその中に、見ている僕の全て、人の運命でさえも飲み込んでしまう、そんな底の知れないものを感じさせ怖い。しかし、如何どうしてなのか、僕はそんな暗い海から目が放せないでいる……志緒梨とは、昨夜、電話で話は出来たが、ほんの三分程だけで、そんな短い間にも、彼女は乾いた咳を何度もしていた。その時の彼女の様子は、まだ僕の耳には今も残っていて、眼下の深く暗い海の色が余計僕を不安な思いにさせる。

 僕が、久米島に行って何をするのかは、部長の新城に聞いのだが、彼は唯「久米島に行けば、迎えに比嘉ひがさんという人が迎えに来るから、仲村さんのするべきことは、全てその人に伝えてある」と言うだけで、僕はこれから何をするのか、ということは全く分からないままだった。

 そんな僕の不安な思いや志緒梨への想いは、僕に冷たい冬の暗い海の景色が、そういう風に見せているのだろうか。

 フェリーは久米島の港に着き、タラップを降りて行くと、僕を待っていた比嘉という五十代半ばの男が声を掛けてきて、その人の軽トラックに乗った。

 車は走り出すと、比嘉という男は挨拶もそこそこに喋りだした。

「どうも、この度は我々の事業を見て下さる、ということを引き受けてくれて有難う御座います」

「エッ、何のことですか? 僕は何も聞かされず此処に来たので……」

「アッ、そうそう、これ仲村さんに二日前に届いていました」

 彼は、そう言いながらダッシュボードから封書らしきものを取り出し、僕に渡してきた。

 僕は、封を開け中を読み、唖然とした。差出人はただアース・フーズと名だけで、内容は久米島の比嘉という人、他数名がグループで微生物を使っての無農薬野菜のコロニーを立ち上げることになり、我が社でもタイアップというかたちで協力することとなったので、何らかの成果が出るまで協力と面倒を看るようにとあった。更に、僕の現在担当していた営業先の管理に関しては、もう既に新たに求人を出しもう後任の者は決まっていて心配は要らないとのことだった。

 数日前に、僕宛ての意味不明な禍々まがまがしい辞令は、このことだったんだ。なんとも卑劣な、僕個人の意思というものは全く無視した会社の勝手な方針だ。と、いうことは、この辞令をまっとうしけなければ会社にそむくこととなり、僕は会社にいることが出来ない、ということなんだ。そこまでして、僕と志緒梨の中を引き離したい、ということだと思うが、なにもそこまで……もう僕には、この世に志緒梨以外信じるものがもうなくなってしまったのだ……もう……。

 茫然自失の僕に、隣の比嘉という男は、僕が読み終えたのを見て、また勝手に自分たちのコロニーの話をしているようだが、すでにホワイトアウトしてしまった僕の頭には無意味なことだった。

 しかし、会社からの要望の何らかの成果とは、この島から野菜をアース・フーズが引き取る迄のことのようだ。それに、土作りに至ってもこれからのようなのだが、早く出荷の可能な葉野菜に至っても半年の覚悟は必要なようだ。

 その日は、コロニー予定地を視察をし終え、夕方から比嘉さんのグループの人たちが集まって僕の歓迎会をしたが、主人公である僕が始終しかめっつらでいたから、宴は盛り上がらないまま二時間程で終わった。僕の為に比嘉さんたちが借りてくれたワンルームのアパートに行き、缶ビールを飲んで寝ようとしたら、志緒梨から電話が着た。

「仲村さん、今久米島に行っているそうね。そこはどう? 上手くやってる? 帰りはいつになるのかしら」

「ウッ、ウン、まあまあ行っているよ。帰りか? 帰りは少し時間が掛かるかな。でも長くは掛からないから、心配しないでいいよ。今日の体調はどうだった?」

「ウーン、いつもと変らないかな……」

 僕たちは、五分程の会話をし、電話を終えた。しかし、電話を切った途端に、目には涙があふれだし僕は泣いた。ベッドに背をあずけ勝手に落ちる涙、誰にも見せたくはないが、この涙は志緒梨にも見せてはいけない、と膝を抱え泣き、泣き疲れるまで、泣いた……僕は彼女に、この島に半年はいるだろう、とは言えなかった。彼女に、そのことを言って無駄な心配を掛けたくなかったから……そのことを伝える頃には、多分彼女も退院をし、きっと元気になっているだろう。唯、やはり気になったのは彼女の話す言葉にかすれた息が混じって聴こえたことだった。彼女は話すのも辛そうで、息を吐きながら言葉を出していたように僕には聴こえた。

 翌日七時に、比嘉さんから電話があって、九時前には迎えに行くから用意していて欲しいとのことだった。僕は何時だっていい、これからどういう風にやって行けばいいのか、先の読めない今の僕は、目の前にあるものを唯やりこなすだけだ。

 そして、この島に来て二週間が経った……人は心を閉ざすとこんなにも寡黙かもくにもなれるものなのか、と思うほどにそんな自分をさめめた目で見ている自分がいた。

今の僕は、誰に話し掛けられても必要最小限の言葉しか出ない。そうしながらも、どうにかこの二週間はやってこれた。だが、僕の鬱積うっせきしたこのおもいは、なにかちょっとした切っ掛け、それはバタフライ・エフェクト理論を引き合いに出したくなるほどに、とても些細せんさいな、センシティヴ的出来事により僕の精神状態のベクトルは何処へ向かうのか、ということは僕自身わからない。それほど僕の中には、いつ爆発を起こすか分からない爆弾のようなものを抱えながら、その時々をやりこなすのに精一杯でいた。

 日中は、小さな木々などが茂っていた荒れ地を開墾かいこんしたりと、力仕事に体を酷使こくしし痛めつけ、その痛みに心の痛みをごまかそうと更に体をいじめた。夜は酒で、独りでいるという時間を埋めようと、意識が朦朧とし眠りに就くまで飲んだ。ただ僕の一縷いちるの支えは、毎晩の志緒梨との二、三分の僅かな時間、電話での会話だけだった。その晩も九時といつもより遅い時間だったが、志緒梨から電話があった。

「ハァ、ハァ……仲村さん、聞こえてる? ハァ、ハァ……」

「 ぃちゃん、どうしたの? 息苦しいの? 大丈夫?」

「私は、大丈夫だから、心配しないで、ハァ、ハァ……それより、川平君に聞いたの……ハァ、ハァ、仲村さんが、久米島に飛ばされたって、ハァ、ハァ、新城さんもウチの家族も酷いわ……ごめんね。たぁ、ハァ、ハァ、たぁちゃん、ごめんなさい……」

「 ぃちゃん、そのことならもういいよ。それより、本当に苦しそうだけど、大丈夫なの?」

「ネェ、ハァ、ハァ、たぁちゃん……ハァ、ハァ、前に、たぁちゃんが先に死んじゃっていなくなる時に言ったよね? ハァ、ハァ、たぁちゃんは、私がどんなに離れたとこにいても、私を捜し出してみせるって……ハァ、ハァ、たぁちゃんが、今私の傍にいない。ハァ、ハァ、私、今すごく怖い。怖いの、ハァ、ハァ、早く、たぁちゃん、私の傍に来て……ガチャ」

 携帯電話の向こうで、誰かが部屋に入って来たようだ。女の人の声がした。

「仲間さん、携帯で電話なんかして。此処は病院なんですよ。それに、貴女の側には大切な機械があって……ああ、駄目ですよ。呼吸器マスクまで外して。電話は切って措きます……プツッ」

 呼吸器マスク? 携帯電話を側で使ってはいけない大切な機械? ぃちゃんは、まさか今、ICUの中にいるの? まさか、まさかだよね。ぃちゃんが……まさか。

 僕は、身の周りの荷物を取敢とりあえずえず纏(まと)めたが、此処は沖縄本島から離れた島、船でないと彼女の傍へはいけない。

 僕は、具志堅に電話をし志緒梨のことを伝え、急いで病院へ行って彼女の容態を見て来てくれ、とお願いをし、僕は寝ずに彼からの連絡を待った。

 そして、午前四時過ぎに連絡がきた。彼が言うには、志緒梨は最初病室だったが、彼がそこに着いた時点で彼女はICUへと移されたのだ、と言っていた。それに、志緒梨の両親が彼女の子供たちを連れて来ていて、なんだかやばい感じだから、僕も来れるのなら早く来てくれと、彼も泣いて伝えてきた。

 ようやく窓の外も白みかけてきた。僕は、荷物を持ち港へと向った。

 朝の港の館内は、守衛の姿もなく。館内の貼り紙で、フェリーの出船時刻を見ると、この港から出るのは、午前十時以降になりそうだ。

 時計を見ると、現在時刻は午前五時八分だ。僕の中に多少の抵抗はあったが、比嘉さんに電話を掛けた。そして、仔細しさいはぶきおおまかだったが、志緒梨の容態を伝え、どうしても僕は行かないといけないんだ、と言った。すると、比嘉さんは、僕の居場所を聞いて、一言「そこで、待っていろ」と言って、電話を切った。それからしばらくして、比嘉さんが軽トラックに乗ってやって来た。

「仲村さん、急いでいるのなら此処じゃあない。早く乗って、島の反対側の港に、高速艇が着くからそれに乗った方がいい。さあ、早く……」

 高速艇の出る港に着き、比嘉さんは、それじゃあと去って行ってしまった。

 僕の手にはクシャクシャの一万円の紙幣が三枚あった。それは、此処に来るまでに、車の中で、電話では詳しく話さなかったことを比嘉さんは訊いてきて、彼は僕の言い訳に分かったと言ってくれた。その上で、ことが落ち着いたのなら、また此処に戻って来てくれと、餞別せんべつに貰ったものだった。

 八時になり。僕は船の切符を買い、九時を過ぎた頃に高速艇は到着をし、僕は乗船したものの、船は一向に出る気配がない。操舵室へ行って、船長らしき人に尋ねた。

「悪いね。此処に着いたら、那覇から連絡があって、今那覇近辺の天気が大荒れで、その辺りの船の出入りは禁止なんだと……先月もそんな日があっただろう? それと同じで、いやそれ以上で今那覇じゃあ到る所に雷が落ちて大変なんだと……だから、悪いが我慢して待っていてくれないか……」

 僕の怒りのぶつける所がない。どうして、こんな時に……僕は仕方なく元の席に着き、具志堅に電話をしてみたが繋がらない。多分、雷のせいで都市機能は麻痺した状態になっているんだろう。僕は荷物を抱えながら、船の窓から見える空を恨めしく眺めた。僕のいる此処、この島は、太陽が出ていてすごくいい天気なのに……。

 どれだけの時間が経ったのだろう。荷物のバッグを腕に抱え手に握り締めていた携帯が、メールの着信を知らせてくれるコモドアーズのThree Times A Ladyのメロディーが流れてきた。このメールの着信音は志緒梨からだ。

 携帯のメールを開こうとした矢先、また着信音が鳴った。今度は電話の着信音で、これも志緒梨の為に設定をしておいたバングルスのエターナル フレイムという曲だ。僕は電話に出た。

「もしもし、仲村さん? 梨緒だよ……もしもし、仲村さん……」

「アッ、エッ、梨緒? なっ、なんでリーオーが?」

「お母さんからのメール、届いた? お母さんが自分に何か遭ったら、仲村さんにこのメールを送って、って言われてたから……」

「リーオー、お母さんに何か遭ったらって……何か遭ったの?」

 梨緒は泣きじゃくっている。そのおかげで上手く話せないようだ。しかし、梨緒がうわ言のように泣きながら吐いた言葉に、僕の全ての世界は凍りついた。

「……お、お母さん、目を開けてくれない……お母さん、息もしていない……もう、お、お母さん……プッ」

 梨緒からの電話は向こうから勝手に切れた。

 僕は、放心状態のままでいたが、船はいつの間にか動き出していた。気がつけば、船の中は客で一杯になっていた。

 僕は、志緒梨からのメールを思い出し、開いてみた。

 件名〔このメールを見ているってことは……?!〕、本文〔 たぁちゃん、私やっぱり駄目だったみたいね?。

 でも、いいのよ。これから伝えることは、たぁちゃん、信じて貰えるか心配だけど……伝えるね!。

 私からすると、三週間程前に未来で、一度死んで生き還って来たの。

 私の未来では、私とたぁちゃんは夫婦で、先に貴方、たぁちゃんが亡くなって、未来の貴方、たぁちゃんは逝ってしまう間際に私に言ったの〝たとえ運命が、私たちふたりを切り離したとしても、私は何処にいても、ぃちゃんを見つけ出すから〟って言ってくれたの……だから、私は未来でずっとたぁちゃんが見つけてくれるのを待っていたの。

 しかし、たぁちゃんは、私の許には還ってはきてくれなかったわ。

 たぁちゃんを失って三年後、私も身体を悪くして死んじゃったんだけど……その時、私は、もしも神様がいらっしゃるのなら、私もたぁちゃんのいるところに逝きたいと願ったの。

 そして、私は死んだ筈だったのに、またこの世界で目が覚めたの……目が覚めた時は、ビックリした。そこは、病院のベットの上で、それも若いたぁちゃんが私の手を握って眠っていたから……貴方の、寝顔を見ている内に、この世界にあった私の意識がリンクしたっていえばいいのかしら、過去の私と未来の私の意識がひとつになったの。

 この世界にいるたぁちゃんは、もしかして私に奇跡が起こったように貴方にも、って思ったのですが、それは私の考え過ぎなんでしょうか? 折角、この世界に来たっていうのに、私の命も後僅わずかのようで、それもずっと苦しいまま……。

 でもね、この世の私の意識が教えてくれたの……短かったけど、貴方と過ごした中で嫌なことも沢山あったけど、でも貴方には沢山の幸せ、沢山の愛に貴方と居たという思い出を貰ったんだ、ってことをね。

 だから、たぁちゃん、沢山たくさんありがとう……もっと沢山たぁちゃんに、伝えたいことは幾らでもあるんだけど、もう私には時間がないみたいだから、最後に一言だけ……私は貴方に愛されたことに感謝します。私の魂はたとえ離れたとしても、ずっと貴方の傍にいます……愛しています!〕

 僕は泣いていた。傍の席のおばあちゃんが、いぶかしそうに見ているから、僕は抱えたバッグに顔を押しつけて泣いた。僕の声は、高速艇のうるさいエンジン音が掻き消してくれた。


 那覇のとまり港に高速艇が着くと、具志堅が絵美ちゃんと車で迎えに来ていて、その足で僕たちは病院へと向かった。

 病院に着き、病室の前に行くと、アース・フーズの社員たちが廊下で、僕の顔を驚いた顔で見ていた。その表情達を押し退けて病室に入ると、ベッドを囲み志緒梨の家族がいた。そして、ベッドにすがりつき梨緒と一哉が泣いていたが、僕に気づきこちらを見た。

「仲村さん、お母さん、死んじゃったよ……もう目を開けてはくれないよ……」

 僕は、思わずそこにいた家族さえも押し退けて、志緒梨の傍に立った。

 彼女は、ただ眠っているかのように横たわっている。今はもう苦しくはないようだ。今、志緒梨は、唯眠っているだけ……。

 僕は堪え切れなくなり、志緒梨に縋りつき泣き、彼女の名を呼んだ。すると、側から声がした。

「この男は死神だ。こいつのせいで志緒梨が死んだんだ。こいつをこの部屋から追い出してくれ」

 社長が叫んだ。その声に新城が応え、部屋の外の部下たちに呼び掛けた。

「オイ、誰か、この仲村を外に追出してくれ……早くしろ」

 渋る社員たちに、彼はたたみ掛け怒鳴る。仕方なく数名が僕の両脇に手を差し込み、無理やりにベッドから引き離し、僕は廊下へと引き摺り出され、胸を嫌という程押されて、僕はその反動で突き飛ばされて倒れた。

 その様子を見ていた具志堅と、絵美ちゃんが呼んだのか、佐和田さんが具志堅の傍で立っていた。そして、佐和田さんがえた。

「オイ、そこの犬にもおとる畜生ども、そんなに人の不幸が楽しいか? 俺は、お前等のことは聞いて知っているぞ。そんなにも、人の幸せがうとましいか? オウどうなんだ? 答えてみろよ。この情もなく、へったくれの鬼畜生どもが……もうお前達の化けの皮は剥がれたんだ。これで、お前達の会社は終わったな。もう何処も、お前達とは取引するとこなんてないよ……それじゃあな。あばよ」

 それを、見ていた社員の何名かが顔を伏せたのが目に入った。

 具志堅と佐和田さんは、僕の両脇を支えて立たせてくれた。

「仲村、お前もよく堪えながらも志緒梨さんの傍にいて、ささえてやったよ。話は、こいつから聞いていたよ。志緒梨さんも感謝している筈だよ……あの世でな。だから、もう此処にはいないはずだ。もう、此処には用はない筈だから、もう帰ろうぜ」

 僕は、二人に支えられながら歩き出した。

 二人は僕を抱え、無言のままエレベーター・ホールに着くと、丁度エレベーターの中から看護婦二人が、緊急用のベッドを押し出して来て、僕たちとすれ違った。ベッドの中に目がゆき、はっとした。中にいたのは松本小夜香だった。

 目は閉じているようだ。寝ているのだろうか? しかし、すれ違い様に、彼女の薄く閉じた瞼の奥に、僕の姿を見ている視線を感じた。それも、何かを僕に訴え追いすがるように、視線は僕を追っていた……それを、僕は感じた。

 すれ違った看護婦の声が、後ろから聴こえてきた。

「この患者さん、またしちゃったんだって、今度は、後もう数分遅かったら駄目だったみたいよ。どうして、死に急ぐのかしら、それも病院のシャワールームなんかで……」

 何故だろう? 僕は、離れて行くそのベッドから離れてはいけない。しがみつきたい衝動に駆られた。しかし、憔悴しょうすいし切ってしまった身体からだにはもう力もなく、両脇を抱えられている僕の体は、エレベーターの中へと引き摺り込まれて仕舞い。僕の、不思議な想いを断ち切るように、エレベーターのドアが閉まっていった……。

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