第2.5話 ソファ

「ね」


「なんだ」


「ソファ買ってよ」


「ソファ?」


「ベッド。あなたの血でべたべたになったから」


「新調しただろうが」


「でも欲しいんだよねえ。ソファ」


 彼女がすり寄ってくる。夜なので、許した。


「あなたとふたりで座る、でかいソファ。やわらかくて、動物のしっぽみたいなふさふさのソファ」


「公園のベンチで俺は十分だけどな」


「血だらけで寝てたもんね。でも、クーラー効かせた部屋で、もこもこのソファ。良いと思いませんか?」


「まあ、しかたねえな。買うか」


「やったっ」


 小躍りする彼女。

 そんなことばかり、思い出す。

 今、自分はまた、公園のベンチで。

 彼女はきっと今も、もこもこのソファに座っているのだろう。

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