大安に、幸福を射た

 嵐は去った。布団を出て、洗面所に入った。洗顔後、台所の電気ケトルにミネラル水を足した。沸き立ての湯で、インスタントコーヒーを淹れた。最後のビスケットを齧りながら、熱いやつを飲んだ。窓ガラスの向こうに、昨日とはまったく異なる天気が展開していた。食後、バルコニーに寝具類を干した。


 居室に行き、ニンテンドーDSを起動させた。ファイナルファンタジーⅣの続きを始めた。救出したローザと洗脳が解けたカインの力を借りて、第三の四天王を撃滅した。崩壊する魔塔から脱出した一行に与えられた新任務は「裏世界の入口を探す」という途方もないものであった。壮大な法螺話が楽しめるのが、RPGの醍醐味だと思う。


☖セシル〔聖騎士・レベル43〕HP2506/MP180/ブレイクブレイド

☖ヤン〔修道士・レベル44〕HP2206/武器:じごくのつめ&ようせいのつめ

☖シド〔技師・レベル42〕HP1979/MP0/武器:だいちのハンマー

☗ローザ〔白魔道士・レベル30〕HP699/MP180/パワーボウ&どくや

☗カイン〔竜騎士・レベル36〕HP1296/MP46/武器:ウィンドスピア


 DSの電源を切った。身支度と戸締りを終わらせてから、自室を離れた。通路を進み、階段を下った。駅の方角へ歩き始めた。平穏な雰囲気が我が町を包んでいた。俺が歩いた範囲と見た限りでは、被害や損害は出ていなかった。これに勝る喜びはない。何事もないことが一番の幸せなのだ。それを普段、俺たちは忘れてしまっている。そして、昨日のような状況になると、慌てて思い出すのである。そんなことを考えつつ、歩行を続けた。


 道中、蕎麦屋の前を通った。その瞬間、猛烈に暖簾をくぐりたくなったが、実行はしなかった。この店のおばちゃんは好きなのだが、おっちゃんの方がどうもダメなのだ。俺が何を食べようが、俺の自由である。それについて、文句を垂れる感覚がわからない。客をなめるな。

 貸し円盤(DVD)屋に体を運んだ。借りていた三枚を返却し、新たに三枚借りた。取り寄せの手続きを済ませてから、店を離れた。帰路の途上、手作りパン屋に寄り、手作りパンを三つ買った。アパートに戻り、愛機を起動させた。セルバンテスを呼び出し、バーバリアンの編集に没頭した。〔13日〕

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