先負に、女王を射た

 布団を出て、厠に入った。石鹸と水で手を洗った。台所に行き、電気ケトルにミネラル水を足した。沸騰後、即席コーヒーを淹れた。チョコレートデニッシュを齧りながら、熱いやつを飲んだ。窓際の時計が「朝の7時」を示していた。露台に全ての寝具を移動させた。今日は終日晴天の予報である。絶好の乾燥日和だ。

 屋内に戻り、ニンテンドーDSを起動させた。二杯目を飲みながら、タスケチェスを指した。対戦相手は「レベル9のJACK」である。先手(白)闇塚、後手(黒)JACKの設定で、ゲームスタート。


[01]♙d4,♟d5[02]♙c4,♟e6[03]♙e3,♝b4 Check![04]♘c3,♞c6[05]♘f3,♞f6


 とまあ、合戦の導入はこんな感じである。白と黒、両軍の騎士たちが前線に躍り出る。


[06]♗d2,♟:c4[07]♗:c4,♟h5[08]♖f1⇔♔g1,♟a5[09]♘e5,♞:e5[10]♙:e5♞d7


 黒軍は両端のポーンを前進させる。白軍はキングの入城を済ませてから、右翼のナイトで敵のナイトに斬りつける。中盤に敵クイーンの捕獲に成功したが、それからが大変だった。そう簡単には勝たせてもらえないのだ。


 DSの電源を切った。愛機を起動させた。セルバンテスを呼び出し、バーバリアンの編集とスラグマンの復元を行った。シャットダウン確認後、身支度を整えた。最後のカギをかけてから、自室を離れた。

 駅前商店街に足を進め、移住以来、ずっと通っている中華料理屋に入ろうとしたのだが、俺の知らぬ間に閉業していた。刹那呆然。力のない足取りでその場を離れ、別の店に入った。み*つ*麺なるものを食べた。再び暖簾をくぐりたいとは思えないような味だった。

 俺の好きな店がまたひとつ消えた。これも増税の影響であろうか。まったく他人事ではない。俺の人生だって、どうなるか、わかったものではないのだ。気がついていないだけで、既に詰んでいたりして……。〔6日〕

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