第16話 いざニートの里へ

「オレはしばらくニートの里にいくから、あとはよろしくね」

「なによ、その変な言霊の……なに?」


 アシュリーがカボチャ頭を消しながら、可愛い顔を困惑させる。やっぱスキルでつくった物か。国宝並みとか、わけわからない適合フィットしてたし、むしろ渋面したいのはこっちですけど、


「ノース・エンペラー・アーリー・タートル。頭文字を取ってN.E.E.T.ニート、意味は『北帝の子亀』だ。東方世界で玄武と呼ばれる神亀しんき眷属けんぞくらしい」

「その割に、言霊から溢れるナマケモノ感? が凄いんだけど」


「そりゃ玉鉱ぎょっこうを食べたら、消化するまで数十年は眠りつづける、ものぐさしゅだし。だからこそ、快眠できる結界なら、そのコアになってくれるはずなんだ」

「そこまでの結界で何をするの?」


「うーん。帝国がこの辺りに、悪質な結界を張ってるから、上書き改竄かいざんしようと思って」

「そんなっ、エルトス教会の6つや7つ、ロアンさまなら半日もあれば壊せるではないですか」


 ラクシャが、唐突に口を挟んだけど、


「まあ、そうなんだけど。帝国軍でりたから。きっとどれだけ壊しても、アイツら直しつづけるよ。帝国民から搾り取った血税で、ね。皇帝や教皇から順に殺していけば、割とすぐ諦めるだろうけど……」

「……あまり気分のいいやり方じゃないわね」


 ラクシャがつづけないので、アシュリーが話を繋ぐ。

 ドーンと神威を示したいけど、人間の些事に言及するのはみっともない、って感じかな。まったく、ラクシャはコミュ障なんだからー。


「だから、こっそりバレないように結界を改竄かいざんするんだ。帝国には馴染みのない、東方の結界を使ってね。本来は、東西南北に四神ししんを置くけど、ニート級のコアなら北の玄武だけで十分だろう」

「ふーん、ちょっと面白そうね。私も一緒にいっていい?」

「村の作物たちを放りだしてもいいの?」

「くぅぅぅ……」


 葛藤かっとうするアシュリーに代わり、ラクシャが、


「とはいえロアンさま一人では心配ですね。わたくしはここを無闇に出られませんし」

「わたしが潜影ダイブでついていく」

「レーネ、さんじゃ一緒にサボりそうです」

「えっ、そっちの心配?」


 別に、久しぶりにぼっちを満喫しようとか、のんびり寄り道しまくろうとか思ってません……よ?


「じゃ、じゃあ、わたしがお供しますっ!」

「ごめんタトラ。オレの瞬間魔動テレポートはオレしかべないんだ」


 なにより、戦えないタトラを連れてはいけないよ。


「では、せめてこの仙羊パニールの毛で作った人形に、タトラ殿とわたくしの髪を入れこんで………………お守り代わりにお持ちください」

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