第15話 いかがわしい家じゃないのに
「急に黙りこまれて、奥にいるかたのことですか?」
「昼間の子が起きたね」
「……? アシュリーさんのことですか?」
「うん、なんか凄い気合い……」
ヤだなぁ……、闘気が漏れてますよ? もうオレと戦う理由はないよね? ね?
あっ! ラクシャとレーネを警戒してる? そうだよね、君たち無駄に強いし。でも、話せばわかる、わかりあえるよっ、だから平和を諦めないでっ?
なんて
夏の
「は、はじめまして同士のみなさん。わたしは農民仮面ファーマスク! 共に独立めざして戦いましょうっ!」
くぐもった祭りの喧騒みたいな声で、偽名をかたった。ツッコミどころしかないんだけどもっ? いや、いまは刺激しないよう穏便に、
「……は、はじめまして? 農筋仮面サン?」
「農民仮面っ! なによ農筋って? 自分にそんなお馬鹿な名前つけないわよっ!」
「アッ、ハイ、ごめんなさいファーマスクさん……」
鏡を見ながら、もう一度そのセリフを言って欲しいっ。
「それで、その……、独立の戦いって?」
「もちろん村の独立よ。そのために、この戦闘服をくれたんでしょう?」
いや、ただの農民らしい質素な服……、が
ダメだ、こんな天然
「ところで、今日のお昼に、アシュナン国の姫がきたんだけど、行方不明なんだよね。シンパイだなー、ちょっとご両親におしらせしに、」
パシッ! オレが手首を掴むほど、鋭い突きを入れてきた
「ひ、卑怯よっ! 脅迫する気っ?」
「何がですかファーマスクさんっ? アシュナンの姫と、何か関係あるんですかファーマスクさんっ!?」
「ないわよっ! 華やかであかぬけた王家の姫が、こっ、こんな格好するわけないでしょっ!」
「デスヨネ! ならいいじゃないですかファーマスクさんっ! 安心してこの村にいてくださいよファーマスクさんっ!」
「くぅぅ……」
ふっふっふっ、ちょっと可哀想な気もするけど、いますぐ追いだすわけじゃないし。恨むなら、オレを本気モードにさせていた、小悪魔たちを恨んでねっ。
なんて勝利の余韻に
「あの、アシュナさまの巫女とお見受けしますが、ロアンさまとはどういった関係なのですか?」
ラクシャが喋ったっ!? いや、アシュリーなら格も力も十分というわけか。じゃなくて、なんか不穏な流れだぞ、
「た、ただの初対面ですよね、ファーマスクさんっ!」
「ロアンとの関係? そう言えば、独立軍の本部(?)の割に、可愛い女の子しかいないわね。もしかして、ここってそういう、」
「はい、婚約者のわたくしが、ロアンさまと住む家です」
「わたしも、ずっと一緒にいようって言われてる」
「わ、わたしだって、今日から妹と住みこみますっ」
わかってた、この流れだってわかってましたっ。トドメにアシュリーが
「よかった! 私も気がついたら、この家に連れこまれてたの。つまりはそういうことよね、それならお母さまも納得するわ」
「しないよねっ!? ってか、連れこんでないしっ、ここに運んでタトラ、その子に介抱して貰ったのっ!」
と、勢いのままタトラを紹介すると、
「そうだったのね、ありがとうタトラ」
「いえ、気にしないでください。ア、……ファーマスクさんこそ、倒れるまで農作業をしてくださったみたいで、ありがとうございます」
二人とも、いや四人とも根はいい子っぽいのに、なんでオレにだけそうじゃないのか、それがまるでわからない……。
「アシュリーでいいわ。本当は、この村が大変そうだから助けにきたの。でも、ロアンの強さだけは本物だった、……まさに英雄色を好む、よね」
「はい、ロアンさまはちょっとエッチで意地悪ですけど、凄くお強いんですよ」
……前言撤回、寄ってたかってオレを悪者にする悪い子だった。
え、もう言わせておけ? ……アシュリーがいるなら、肉を切らせて骨を切る的な? さすが〈ソロ
じゃあ、そのために既成事実を積みあげないと……?
「ここに居座るなら、アシュリーも働いてね。とりあえずラクシャとレーネを手伝って、食料の分配と、村の警備をしてくれる?」
「いいわよ、ついでに農作業もしてあげる!」
「えっ、普通に人と話せるのですかっ?」
「天……才……?」
ラクシャとレーネが驚くのもよくわかる、、、わかりすぎてむしろ切ないっ。
「!? でも、おかしいです。ロアンさまができることを命じるなんて」
「確かに」
「そう言われると……」
「べ、別に、そんなんじゃなくて、普通に苦手なことを頼んでるだけだしっ!」
「「「「あー」」」」
なにその納得できたって雰囲気は!? みんなも十分コミュ障なのに、さすがにちょっと腹立つんですけどっ。
……ま、まあ、いいよ、アシュリーだって微妙にこっち側だし、オレは諦めてないからね……。
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