第11話 喧嘩するほど仲がいい?

「わたしは無敵だって言ってるでしょ、ロアンを虐めないで!」

「なら大人しくでてきなさい。ロアンさまに何かあったら許しませんよ!」


 2人の美少女に心配されて……。

 できれば期待に応えたい。


 息が詰まるほどの焦熱も、名目上はバージンロードだ。

 燃えあがる故意の炎に。

 いくらオレが鈍感でも、この思いだけは誤魔化せなかった……。



「あっつぃよっ!」


 叫びつつ、燃えてない、湖のきわに飛び移る。


「無理だって! どう現実逃避トリップしても、熱いものは熱いってっ!」

「曲者がをあげるまで我慢してください。このまま居座られてもいいのですか?」

「無駄よ。夢影潜影ナイトメア・ダイブでわたしは無敵。それに影って誰かのものなの? 居るとわからないのに、居座るなんて言いがかり」


 レーネ、立派な暗殺者アサシンになっちゃって。思わず涙腺が緩みそう。いろんな意味で……。


「むしろ、わたしを追いだせないのに、ロアンを焼いた。そっちの方が迷惑よ。ロアンがMなら別だけど、ロアンは結構Sだもん」

「いや、ノーマルだけど!? 勝手にオレの性癖決めないでっ?」

「その通りです、わかっていませんね」


 よかった、ラクシャが味方してく、


「ロアンさまはMですから。わたくしはそれを見抜いてました」

「会ったばかりでっ!? もっと時間をかけるべきじゃない? 3人の意見を平均したらノーマルだけど?」

「ほら、ちょっと嬉しそうです」

「よしっ、ラクシャはまず人を見ることからはじめよう。しっかりと、この悲しそうな顔を見て?」


 喧嘩にかこつけて、オレをもてあそんでるよね……?


「そう、ずっとロアンに張りついて、観察すればそのうちわかるよ」

「わかんないよっ!? なんでそんな結論になっちゃったっ!? オレのプライバシーを切り捨てないで?」


 以前から、ほんのりそこはかとなくバレバレだけど。レーネはプライベートに尾行しごとしちゃう系の暗殺者アレだよね。手遅れになる前に、猛省してください?


「大丈夫。ロアンに察知されない代わりに、ロアンのことはわからない。プライバシーは完璧だよ。いまは消音ミュートを切ってるから、互いに声が聞けるけど」


 よかった、今日はじめてレーネからいいこと聞けた気がするっ。


「ロアンすら、わたしのダイブに気づかなかった。誰も気づかないから、誰にも迷惑はかからない」

「ロアンさまに迷惑をかけまくっておいて何を……」


「わたしが表にでたのはロアンを守るため。ロアン、右手を見て。それは、」

「ロアンさま、それはっ、」

「もういいよ」


「……っ」

「そうよ、言い訳しないで」

「どちらかというと、もういいのはレーネの方だよ」

「っ!? ど、どうして? それはあの女が巻きつけたんだよ?」


「わかってる。でもオレは……」


 レーネが影に引きこもるのは嫌なんだ、と、喉まで出てた言葉を飲みこむ。


「知らないうちに潜影ダイブされてたなんて。ぼっちオレのプライドがズタズタだ。だから、レーネには出てって貰うよ」

「…………そう、なんだ。それで、こそロアンだよ。また、わたしより、プライドなんだ?」


「そうだよ。だから、ダメは捨てて、新しい恋に切り替えようよ」

「本当に、男の趣味が最悪ですよ?」

「そんなのに求婚したのは誰でしたっけ?」


 ラクシャのナイスアシストに、うっかり抗議しただけなのに、


「2人でイチャつかないで!」


 ラクシャにディスられ、レーネにも責められるとか理不尽すぎない?


「……ロアンなんて大嫌いっ! わたしはただ、手近にロアンがいたからダイブしただけ。変な勘違いしないでよっ!」


 レーネは、私用でお仕事しちゃう困った子だけど。なじる声もいじらしい、ショートカットの映える美少女だ。だから尚更なおさら心にくるけど、


「嫌いなら素直に出ていこうよ」

いや! ロアンが嫌がるなら意地でも出ていかない!」


 やっぱりこうなるか……。


 ならオレも。潜影ダイブされるくらい腑抜けてた、ぼっち精神を叩き直すとしますかね……。


 ………………。


 オレの力は、莫大な代償や制約がある因果双報ネメシスだ。


 レーネの潜影ダイブも、オレに感知されない代償に、レーネもオレを見聞きできない。つまりは、オレ絡みの因果双報ネメシスだった。無敵の潜影ダイブなんて滅茶苦茶だからな。

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