3.影に潜む恋

第10話 思いがけない再会

 次の瞬間。

 ラクシャの顔に赤辛子、真っ赤な粉が降りかかる。


「なにゃぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!?」


 ラクシャが目を押さえてジタバタと悶絶している。わりと元気そうでひと安心。ってか、気取ってない素の反応がちょっと可愛い。


「離れてロアン!」


 オレの影から、どこかで聞いた可愛い声? 潜影ダイブされてる? いや、まずは、


解毒魔場デトックス・スクェア

「どうして治すの? ロアン、右手を見て」


 見なくてもわかってる。

 ラクシャの涙とおっぱいに惑わされ、上着の紐を巻きつけられたことに気づけなかった。という言い訳で、オレは気づかないフリをした。けど、


「紐のはし。……もしかしてレーネ? が切ってくれたんだよね」

「うんっ! わたしを覚えててくれたのっ? 嬉しいっ!」


「どういうことです、曲者をご存じなのですか、ロアンさま?」

「そうよ、声でわかる仲なんだから、振られた部外者は黙ってて」

「振られてません! そっちこそ黙っていなさい」

「なんで二人は喧嘩腰なの? 仲よくしようよっ」


 どうせ被害にあうのはオレなんですよ?

 ラクシャは神の使徒だし、レーネも高レベルの〈夢影の暗殺者ナイトメア・アサシン〉だ。その間に挟まれたら、絶対ひどい目に遭わされる。


 なんとかして仲直りさせないとっ。


「赤辛子で攻撃されれば、抗議するのは当然です!」

「わたしはロアンを守っただけ!」

「わかってるから、まずは落ち着いて話しあおうよ、ね?」


「話しあうも何も、曲者が謝罪すればすむ話でしょう」

「謝るのは、ロアンに悪さした部外者だよ」

「わかった、じゃあオレが代わりに謝るから仲直りしてくれる?」


 それでいいなら、いくらでも謝りますからっ。


「ロアンさまが謝ることではないでしょう?」

「そうだよ、わたしはロアンのためにしてるんだよ?」

「そうだよね、うん、わかってる、わかってるから」


 まったく何もわからないけど、いまは納得してほしいっ。


「どうしてそう煮え切らないのです、ロアンさまはどっちの味方なのですかっ!?」

「ロアン、どっちの味方かはっきり言って!」


 ううぅ、やっぱ男はスパっと言うほうがいいのかな? じゃあ、オレの素直な気持ちをはっきりと……、


「どっちのでもなく、オレはぼっちの味方だよっ。ラクシャもレーネも大切な、ぼっちの仲間だっ!」

「「ぼっちじゃない(です)!」」


 ……そんなとこだけは仲良しなんだね……。


「もう結構です、ロアンさまには頼りません。わたくしがいぶりだして差しあげますわ!」

「ちょっ、待ってっ! いぶりだすとか言いながら、どうせオレごと黒焦げなんでしょ?」


「ううん、いまのわたしは無敵だから、黒焦げなのはロアンだけ。ロアンちょっと可哀想」

「ちょっと? 普通に可哀想だよ!? 黒焦げなのにぃ!?」


 オレの真っ黒な未来図を、必死に訴えただけなのに、


「また……、2人でイチャついて……っ!」

「いゃっ、イチャついてないでしょ? むしろ切り捨てられようとしてますよ? まずは落ちついて」


花嫁の炎道バージンロード

「話しあっつっ! ちょ、これ、さっきもレーネには効かな、」


最大火力クライマックスっ!」


最大火力クライマックスぅ!? 最高潮じゃなくてっ!? 結婚式でなに焼くのっ!?」

「これを耐えられない軟弱者に、花婿の資格はございませんわ」

「おかしいから! 古代の婚礼、花婿に厳しすぎだよっ! 火葬なのっ!? 結婚式のつもりが、葬式を挙げてるよっ!? マジで人生の墓場なのっ!?」


 あっつっ、熱いってっ! いくらオレが抵抗レジストしてても、服が焦げちゃう、ホントに焦げちゃうからぁっ。


「わたしは無敵だって言ってるでしょ、ロアンを虐めないで!」

「なら大人しくでてきなさい。ロアンさまに何かあったら許しませんよ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る