2.神の使徒の圧迫縁談
第6話 羊の嫁入り
「もう! そんな悪戯するなら洗い終わるまで外で待っててください!」
怒ってはないようだけど、声を上ずらせるタトラに、
「ごめんごめん、軽い冗談のつもりだったんだ。外にでてるから終わったら呼んでね」
そう言い残し、オレは風呂をでていった。
黙っていれば耳だけでも、乙女たちと入浴できたのに。なぜかほっと息が漏れ、風呂の蒸気を吸いこんだ。
†
その後、なんやかんやで、アシュリーを客室のベッドに寝かせた。
ま、オレは目隠しのまま、アシュリーの体を浮かせたり、運んだりしただけだけど。もちろん、服越しでも柔らかな感触があった。あったけれども。タトラに悟られないよう、男のやんごとない純心を隠すので手一杯だったよ……。
そんなこんなで、あとはタトラに任せて部屋をでる。
状況が落ち着くまでは、オレがここの領主だ。ソロ
なんて考えながら自室に戻る。
昏い室内。冷えた夕陽が、木窓から逃げていくよう……。
今日も色々あったなぁ、と一息つく暇もなく、ソロ
マジか……。
なんて愚痴ってる間に、北の、村外れの山のほうから20人? くらいの反応が。
ソロ
この便利さと、そこはかとない疎外感こそ、ぼっちスキルの醍醐味なのだっ!
……なんて
仕方ない。家に
初夏の
†
湖にたゆたう月を横目に、侵入者のところにきてみれば。
なんだろう……。角がある以外は人と同じ、
従者はみな生気がない。式神だな。
そんな行列の中央を。華やかな民族衣装の女性が占める。なかなかに神秘的な光景だ。
「……すみません、ちょっといいかな?」
遠慮がちに声をかけると、従者たちが
人間なら
その
「
涙ぐむ彼女は、ひとりで涙のゴールをきめていた。あぁ、うん、これは夢だな、やっぱ夢だとは思ってたんだよ。
でも……。
「頬をつねったら
「まあ、
彼女が上目遣いに手を触れて、悩ましい現実を突きつける。
どっ、どこまで確認できるのでありますかっ!? なんて色めく煩悩を、彼女の涙が非難する。
「お、オレはロアン・ソロウ。帝国を追われるくらいのぼっちだから、人違いじゃないかなっ!」
「いいえ。たった一人で、エルトスの
なんか胸が痛いんだけど? なんでこの流れでディスられてるの? ぐすっ。
押しかけてきた割に、乗り気じゃない雰囲気なんですけど……?
「えっ、エルトスの
「はい。……申し遅れました。わたくしはラクシャ。原初が四神の
クリュナって弱小神かと思ってたけど、この気位。これ以上機嫌を損ねないよう、ちょっと言葉に気をつけよう。
「なのにどうして今まで我慢を?」
「クリュナさまは、ただ
まあ、ここらの
「このままでは、いずれ火の山が目覚めてしまう。神罰の火がエルトスもろとも、
超展開なんですけどっ?
でも……、落ち目の神にそこまでの力がある、かなぁ?
「神さまは悠大なので、いずれというのが百年後、だったり……?」
「いいえ、猶予はひと月もありません。もし神罰が起きなければ、わたくしを好きになさってください。この輿入れは、わたくしの話が本当である証。わたくしの覚悟の証です、ぐすっ」
「はい! ひと
「まあ、お疑いになられてたのですか? なのに百年後かも、なんて方便を使われるお優しさ。これではわたくし、もっと覚悟をお見せしするしかありません、ぐすっ」
詰んでるよ、これをなんとかできるなら、ぼっちなんかになってないよっ!
……くそぅ、とりあえず話題を変えよう。
「そ、その神罰は、止められるのか?」
「もちろんです。もし手遅れになれば、被害はあらゆる命に及びます。クリュナさまとて、そんな
「よかった。具体的な方法は?」
「この地を蝕む冒涜的な結界を、この地を囲む6つのエルトス教会を、排除して頂きたいのです」
「それだけ?」
「はい。冒涜者たちが、教会を再建したりしなければ」
なんだ、こんな案件余裕だし、ちゃっちゃと結界を排除しよう。
オレに惚れてるならともかく、ラクシャの気位だ。”たかが人間と結婚なんてっ!”とか思っているに違いない。そんな嫁入り、オレだって困っちゃうよ。
なんとしても有耶無耶にしなければっ! との決意を邪魔するように。ソロ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます