蜘蛛の糸②
手放せるはずがないのだと、盗賊は願った。
憎かろう、恨めしかろう、壊したいのだろう。闇が絶え間なく耳元で囁く。
それは確かに真実で、黒く燻る怨嗟の念は今でも盗賊の胸を焦がしている。いつであれ蛇のようにとぐろを巻きながら、彼の背後で幾度も誘いをかける。過去の痛みは幾度もその身を灼き、その度、癒しに来る手はあまりに小さい。
いつかの未来を象った少年は、国にすべてを捧げながらも盗賊を救おうとする。穿たれた穴を埋めるのはいつだって、少年の伸ばす手に相違なかった。
例えばこの先すべてが壊れゆくのだとしても。
その手を離すことだけはしたくなかった。
そうして、ヴァランは誓ったのだ。
この少年が己の世界となるのなら、今度こそ奪わせはするまい、と――。
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