怨嗟の炎⑤

 伸ばされた手は、小さなもの。


 与えられたぬくもりは、決して知りえなかったはずのもの。


 耳朶に触れる声が紡ぐ名は柔らかに響き、羽毛のように軽く、されども着実に降り積もってゆくものがある。


 憎しみを抱いて生き、恨みに満ちた者には、決して届くはずのない光。


 そうして、名もない感情は膨れ上がり、じくじくと胸中をあたたかなもので満たしていく。


 一日いちじつ一週いっしゅう一月ひとつき一年ひととせ


 共に過ごす時間は儚く、脆く。


 それゆえに、永遠であった。


 なればこそ、少年たちは知らないのだ。










 ――いつか迫り来る、怨嗟の炎を。






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