怨嗟の炎①

 夢を見るのだ。







 地の底から声が這い、暗黒の泥が四肢を飲み込んでいく。


 ――恨め。憎め。決して許すな。


 すべてを闇へと引きずり込めと声は告げる。心臓に流し込まれる憎悪は、血液を通して全身を隈なく巡る。

 遠くから聞こえる悲鳴。空を舞う血飛沫。呻く人々は黄金の棺へと詰め込まれ、兵士らの狂った高笑いが辺りに響く。

 鼓膜にこびり付き、網膜へと焼き付けられた光景。闇夜に忍んで行われた残忍な所業は、幼子の心を暗黒に染めていく。


 ――血塗れた王に、粛清を。


 途切れぬ怨嗟が身を焦がす。灼熱の炎に等しい熱でもってして、少年の心は焼け焦げていく。

 あの日すべてが失われてから、どれほどの苦渋を呑まされたことか。

 人々が消え去った砂の街に、ただ一人。

取り残された子どもの行く末は、絶望に彩られていた。苦痛の続く日々から子どもを掬い上げたのは、胸の内に灯り続ける怨みであった。

 そう。

 怨みこそが己を生かし前へと進ませる。それを知っているから、彼は盗賊として台頭し、子どもながらも世間を騒がせるまでに至ったのだ。

 その胸の内に、怨嗟の炎がある限り。

 この国の王に、復讐を果たすまで。


 盗賊ヴァランは、闇を抱えて生きていく。

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