自己ではない自己採血
今年の健康診断で血糖値が高いという指摘があった。まだ糖尿病というわけでもないが、予備軍ではあるらしい。
ヘモグロビンA1Cという、血糖値の数か月分の平均値が高く、ほおっておくと糖尿病になってしまうという結果だった。
おかげで健康診断をやっている病院に呼び出されて、食事指導やらめんどくさい話を聞く羽目になった。
悪くなったら治療すればいいという気分だったが、ネットで糖尿病のことを調べるとにわかに怖くなり、まず手始めに何を食べれば血糖値が上下するか、自分で調べることにした。
まだ保険適応外なので、血糖値計測値、センサー、針は某大手通販サイトで買った。測定につかうセンサーは薬局での購入が原則で通販対象ではないはずだが、外国から輸入する分は問題ないのかもしれない。
測定器に理科の実験でつかった試験紙のようなセンサーをセットし、自分でランセット針を指先に刺してにじんだ血を一滴、センサーの先端に吸いこませると、モニターに血糖値が表示される仕組みだ。
ランセット針を刺すというのが、にわかに抵抗があり、指に押し当ててスイッチを押すと針が出てくる。痛みはチクリとする程度なのだが、思い切り悪くなかなか刺すことができないことが多かった。
今日も測れないでいる血糖値のことを考えていると、不注意で夕食の料理中に包丁で指を切ってしまった。鋭い痛みの後、じんわりと赤い血が左手の人差し指からにじんでくる。
指に血以外のものが付着して可能性があり、数値が狂う可能性があるので、本当はよくないのだが、もったいないのでにじんだ血を使って血糖値を計測することにした。
血をセンサーが吸い込むと、モニターに血糖値が表示された。数値は見るからにおかしいものはなく、まともな値に見える。
針を自分で刺すより、不可抗力な事故の方が抵抗がないようだ。
ついつい血糖値を測るのを怠けて不摂生な生活をしてしまっていると、定期通院時に測ってもらった血液検査の値が悪化してしまった。
仕方ないので、覚悟を決めて食後に血糖値を測ることにした。
やはり、針を刺すのに躊躇してしまう。
立ち上がると、台所に行き、料理を始める。キャベツを切る際、事故だと思い込んで包丁で左手の人差し指を切りつけた。鮮血がほとばしる。
これだけあれば血糖値を測るには十分だろう。
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