七章

本の隙間を覗く人たち

 最近、ネットで本を買う人が多くなった。そのため紙の本を売る書店は次々なくなってしまっている。

 家には紙の本が増えていて電子書籍にしようかと逡巡している現状だ。

 特に応援というわけではないが、本はできるだけいきつけの書店で買うことにしていた。

 紙の独特のにおいに包まれて、平積みされている本をめくるのは電子書籍や、ほんの通販では得られない体験だろう。

 いつもの通り、本を買うために平積みになっている本を手に取る。ふと、本を数冊とって横からのぞき込む人がいた。

 しばらく見ていると、老若男女問わず本を横からのぞき込む人がいる。

 この本屋の本はビニールで覆われていて立ち読みはできない。

 彼らは同じ本を数冊手に持って、値踏みでもするように、立ち読みもせず本を脇から覗いているのだ。

 意味は不明で、何か本が痛んでいるかどうかを点検しているのではと思っていたが、腑に落ちない。

 そこで、会計を済ませた後、同じように本を横からのぞき込んでみた。

 隙間はわずか数ミリあるかどうかで内容は全く視認できない。

 首をかしげると、上から視線を感じた。頭上を見やると、数ミリくらいの黒い裂け目が現れていて、こちらをのぞき込む男とも、女とも思える瞳が垣間見れた。

 裂け目は刹那に消え去る。

 そっと、手にした本を置いた。

 なるほど、得心がいく。彼らはを見ていたということか。

 逡巡の結果、やはり、自分は紙で本を購入することにした。

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