原因は常に自分?

 自分は人に対してなんでも腹を立て、ことあるごとに人を責めることを繰り返していた。当然人間関係は乱れ、つまはじきにあった。

 仕事でも行動に問題があると上司にも指摘を受けてしまっていた。

 そこで反省し人のせいにせず、自分がすべての責任が自分だと考えるようにした。

 例えば人から悪口を浴びせかけられることは、自分が挨拶をせず、不機嫌そうなのが相手の神経を逆なでしたのかもしれない。

 そのように、色々と自分を振り返り気をつけていると、人間関係は改善し、人を責めることも少なくなり、ストレスも減っていった。

 そこでふと疑問におもう。どこまでが自分が原因だといえるのだろうか?


 休日、買い物に行く道すがらとりとめもないことを考えながら歩いていると、 突然、車がガードレールを突き破って歩道に突っ込んできた。ブレーキをかけた音もしなかった。

 車に跳ね飛ばされて、激しく電信柱に激突する。全身の骨が折れる音が聞こえてきた。 痛みはなく、ただ衝撃だけが伝わってくる。体が地面に滑り落ちたことがわかる。遠くから叫ぶ声が聞こえてきた。救急車を呼べとか言っているようだが、よく聞き取れない。

 全身が動かない。視界が明滅し暗転する。全身の感覚が消失していくようだ。

 思考が引き延ばされる。ゆっくりと過去の記憶が頭の中で再生されていった。

 これが走馬灯というものか。

 自分は歩道を歩いていて決して悪くはない。いや、きっと自分に何か原因があるはずだ。走馬灯が過去に遡って映し出されていく。ゆっくりと車がガードレールを突っ込んでくる場面が再生された。運転手の顔がフロントガラスごしに見えた。赤く染まった顔で酒気帯び運転だとわかる。全く見覚えのない男だ。出会ったこともない。自分が何をしたのだろう? 自分の何が悪かったのだろう? 前世の行いだろうか? この道を選んだ自分が悪いのだろうか?

 何が原因かわからないまま意識が闇にとけた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る