片方しかない軍手
仕事帰りに駅までの道を歩いていると、視界の端に白い物を見つけた。車道と歩道の間くらいに軍手がポツリと落ちている。
片方だけで使い道がないし、誰かが捨てたのだろうと思い、歩き出すと今度は街路樹の枝に軍手が引っかかっていた。さっきの軍手と形は似ている。
後ろを振り返ると、あったはずの軍手は消え去っていた。
首をかしげて、駅に向かって歩き出す。
軍手は駅の改札にも、駅のホームにも落ちていた。気味が悪いので拾うことはしない。
家に帰ると玄関にも軍手が落ちていた。さすがに不気味になってきた。振り返ると一つ前の軍手は必ず消えており、さながら軍手が瞬間移動したかのようだった。
思い返すと、見つけた軍手の数は数十を超えている。さらにそれは煙のように消えている。
薄気味悪さがこみあげてきた。一体軍手はどこに消えていたのか? それとも幻覚だったのか。
玄関を開けて家に入ると、急に吐き気がこみあげてきた。何かよからぬものを食べたのか?
昼食の事を思い出すが、カレーを食べたくらいで不審なことはない。
気分が悪い。胃から何かが逆流してくるのが分かる。慌ててトイレに駆け込む。便器に胃の中のものをぶちまけた。食道を布のようなものが逆流してくる。トイレには大量の軍手があふれかえっていた。
その数は……。自分が見つけた軍手の数と一緒だった。
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