西から太陽が登ってもたどり着かないだろう
仕事が終わり、いつも健康のため一駅ほど歩いている。
その日は、日がすでに西に沈みかかっていて、辺りはやや薄暗くなっていた。
ふと思いついて、違う道を歩くことにした。道を変えるといっても大したことはない。ただ単にもう一つ先の道を曲がるというだけだ。道路を歩いていると車がゆっくりと走ってきて、一瞬視界が塞がれた。
車が通り過ぎると、道の端からこちらを呼ぶ声がした。
昔漫画かアニメで観た天才なんとかのパパの背を高くしたような雰囲気の男が、手を降っている。服は数日は着の身着のままでうろついているように見えた。何か独特な印象を受ける。
無視して立ち去ろうと思ったら、更に大声で呼びかけてきた。仕方なく応対すると、道がわからないという。聞くと三つくらい離れた県からここまで歩いてきたらしい。JRでも三時間か、四時間かかるだろう。歩いてどれくらいかかるかは見当もつかない。
行きたい場所は聞いたこともない場所だ。スマホの電源は運が悪く切れていたので調べることもできない。仕方なく知らないというと、ものすごい速さで後ろをむいて立ち去っていった。
一瞬で男は幻のようにいなくなってしまった。帰宅して場所を調べてみると、男と出会った場所からさらに数県向こうだった。
しかも、男はその場所の正反対の方向に進んでいた。おそらく西から太陽が登ってもたどり着かないだろう。
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