電車の中のブザー
残業時間にも上限がある。大体一日二時間くらいを行うと一月の上限に達してしまう計算だ。
今日もギリギリ残業を二時間行い、帰宅することにした。疲れていて眠気との闘いでもある。
帰宅時の電車は割とすいていたが、席は空いていなかった。
仕方ないので、入口近くに寄りかかってうとうとしていた。
視界が一瞬暗くなる。電車が地下を通る場所だ。
『ブーブーブーブーーーーーー』
突然、けたたましいブザーが鳴り響いた。眠気の中列車内を見渡しても、誰も平然としている。
電車も小刻みに揺れながら、線路を何事もなく走っているだけだ。
車掌が来て何か伝えるかと思ったが、そんな気配もない。
『ブーブーブーブーーーーーー』
ブザーが鳴り続けている。
首をかしげて、いつも下車する駅で降り、なんとなく後ろを振りむいた。
天井を見上げて、車内の真ん中で叫んでいる男の姿が窓越しに見えた。
ブザーとおもったのはその男の叫び声のようだった。
ふと、思い出し背筋が凍り付いた。窓越しに見た場所は、先ほど自分が立っていた場所で、そんな男はいなかったはずなのだ。
明日はできるだけ、残業せず早く帰ろうと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます