逃げてるというのもある
健康のためにランニングをしていると、色々な発見がある。朝、仕事の前に軽く20分くらい近所を走り、一汗かくことにしていた。
樹々が生い茂る公園の周りを走り、アスファルトの硬さを靴底に感じながら、走っていると、背後から気配を感じた。
一人の男が、左隣りを駆け抜けた。必死さを感じる変な雰囲気だ。
なんとなく速度を上げて、男についていった。紺のジャージにズボン、荒い呼吸をしながら男は走っている。後頭部には肌が目立ち、毛は寂しくなっていた。
「ランニングですか?」なんとなくジャージの男に背後から声をかけてしまった。
「ランニング、そ、そうだな――」男が荒い呼吸のなか言いよどむ。
「逃げてるというのも……ある」
曲がり道に差し掛かる。男が右折する。自分とはいく道がちがう。
妙に逃げてるというのが気になった。
背後に強烈な気配を感じた。殺意、怨念といった負の感情が針のように突き刺さってくる。
悲鳴をあげて走る速度を上げた。同じようにランニングをしている人を追い抜いた。
「どうしたんです?」
自分の様子が変だとおもったのか、追い抜いた男性が背後から声をかけてきた。
荒い息で自分が答える。「ら、ランニングで、です。ただ、逃げてるというのもある……」
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