差し出された花
友人と一緒に夕闇が差し掛かった歩道をあるいていたときだ。歩道を隔てて短い横断歩道があり、向こうには目当てのコンビニがみえた。
後ろから迫る自転車をよけると、なんとなく下がった目線の先、電信柱の根本に白い花が手向けられていた。
目を上げると横断歩道を渡る手前に、赤い服を着た女の子が微笑んで白い花を差し出してきた。十歳はいっていないであろう女の子は青ざめた顔色で奇妙な存在感があった。
差し伸べられた花を思わず受け取ると、友人が叫び声をあげた。
後ろにいた友人を振り返ると、その表情は引きつっていた。
どうしたのかと尋ねると、手にもった花を指さした。
やや萎れた白い花は菊を思わせるが名前はわからない。
視線を前に戻すと、女の子はいなかった。
花を元に戻すようにまくし立てて、電信柱の根本を指さす友人に首をかしげながら、何故かなくなっていた電信柱の花の代わりに、女の子からもらった花を手向けた。
後で友人に聞くと、そんな女の子は見ておらず、自分が勝手に電信柱の下の花を手に取ったとのことだ。
調べるとこの場所には事故があり、死者がでたらしい。
それが女の子だったかは確かめてはいない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます