天井の染み
一人暮らしも長い。職を失って蓄えもつきかけていた。不摂生がたたり、体重が増え、ちょっとした階段でも息切れがし始めている。
求人サイトに登録して職を探しているが、有名な不動産販売の営業職くらいしか紹介がなかった。
疲れ切って布団に入り、天井を見ると、不気味な染みがあった。天井裏から何か液体でも垂らしたかのように円状に染みは黒く広がっていた。
ちょうど、五百円玉くらいの大きさだったが、それは日に日に広がっていく。
ストレスのため、酒が増え、ふらつくように万年床に横たわる。染みはさらに増え、目のように二つならんでいた。
次第に染みが広がり、鼻、口にみえてきた。
口に見える箇所から、じわりと染みが広がり、血を垂らしているように見えた。苦悶の表情を浮かべているようだ。
胸に鋭い痛みが走る。スマホを取り出し救急車を呼ぼうと思ったが、意識が白濁していく。息ができない。胸をかきむしる。
理解した。天井の顔は今の自分の顔だ。これからどうなるかは……。いうまでもない。
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