コンビニの闇

 仕事帰りにはコンビニによって夜食を買うことにしている。自炊した方が体にいいのだが、面倒だというのが本音だ。

 ふと、帰宅途中に行ったことがないコンビニを見つけた。こんな店があったのか記憶にないが、店自体は古い雰囲気で、新店舗ではなさそうだ。

 興味半分に店に入ると、奇妙な匂いが鼻についた。消毒液か、ガソリンっぽいにおいだ。

 適当に弁当をとると、菓子パンと、若干健康に気を使った気分になる黒烏龍茶を冷蔵庫から取り出して籠に入れ、レジに持って行った。

 最近は、自動レジというのがあり、無人でも会計ができるようだが、やはり人から精算してもらった方が温かみがあっていい気がしている。

 レジ係は、還暦を迎えるくらいのおじさんで、おそらくこの店の店長だろう。そんな雰囲気だ。

 そういえば、コンビニのフランチャイズはかなり厳しいらしい。その店の売上が上がるとわざと近くに別の店を作り、オーナーが死なない程度に売り上げを削るとか、そんなことを聞いたことがある。

 陰鬱な表情で店主と思しき男性は、バーコードを読みとり、金額をつぶやくような声で告げた。

 ガソリンのような匂いが強くなる。よく見るとレジの周りがところどころ、焦げていた。

 なんとなく、コンビニは夜中まで大変だね。というと。男は顔をこちらに向けた。病的に顔色が悪い。

「ええ、家内もなくなってしまい。なんとか本部に夜の営業をやめてもらおうと頼んでいるんですけどね。何千万の違約金がいるとかで、もう疲れましたよ」

 店をやめることはできないのか? というと、男は皺が深く刻まれた顔を苦し気にゆがめた。

「借金もあってね。辞めるわけにもいかないんですよ」

 ふいにガソリンの匂いが強くなった。

 男が突然、火に包まれた。レジから火柱が上がる。悲鳴を上げて買ったものを放り出して、店を出た。

 スマホを取り出し、消防車を呼ぼうとしたらそこは空き地だった。


 後で知ったが、そこには昔コンビニがあり、店主が焼身自殺したという。

 死んでからも仕事を続けなければならないとは、なんともコンビニ経営とは闇が深い。

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