あらゆることは自分が悪い
その日は人身事故で電車がとまり、スマホで連絡しようにも人がぶつかってきた衝撃で落としてしまった。駅のホームは人でごった返し、動くこともままならず公衆電話をさがすこともできない。
自分が取引先に赴かなければ、契約はとれない。何とか連絡すれば平謝りでどうにかなるかもしれないが、それもできそうもない。
胃が痛くなってきた。雨が降り出して、雷雨となる。電車の再開のめどはたっていないというアナウンスが流れている。
焦燥感だけが、身を焦がす。上司になんと言い訳しようかと思考だけが頭を空回りしていた。
契約が取れなかった損失は、計り知れない可能性が高い。新規の顧客で大口になりそうだったこともある。
心が落ち着いてくると、腹が立ってきた。そもそも電車に人が飛び込むなど、自分ではどうすることもできないことだ。
さらにスマホをなくしたのも、人がぶつかってきたといういわば不可抗力だ。
自分は悪くないと考えていると、ふと昨日読んだ本を思い出した。
内容は、不幸は他人が問題の要因とすることから始まり、あらゆる責は自分にあると考えるようにとのことだった。
なるほど、この不幸の要因は自分のどこかにあるのかと考えていると、電車が動きだすというアナウンスが流れてきた。
ようやくかと一息つく。押されるようにホームの端まで追いやられた。
ひどい雨で視界が遮られている。空に稲光が光った。
電車が近づく金属音が響く。後ろから誰かが自分をホームから突き落とした。故意なのか、過失なのかはわからない。
警笛の音がして、全身に衝撃が走った。電車に跳ね飛ばされたと理解すると同時に、意識が暗転した。
なるほど、さらにダイアが乱れるのは自分の責任に違いない。
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