ノストラダムスの大予言のその後

 昔、ノストラダムスというフランス人がいて、彼は医者だったのだが、謎の四行詩を残したという。

 1999年の7月に空から恐怖の大王が降ってくる。アンゴルモアの大王を復活させるため、その前後に火星マルスは幸福の名のもとに支配に乗り出す。

とかいう詩が有名だったそうだ。

 今は2021年だが、いまだ知人の一人がそれを信じている。毎回会うたびにその話を聞くのだが、まるで理解できない。


 オンライン飲み会でなんとなくそいつと飲んでいると、例によってその話が出てきた。

 そいつは青ざめた顔で、カメラの向こうからノストラダムスの予言がどうこうとつぶやきはじめた。

「1999年の7月に恐怖の大王が降ってくるという予言、さすがにもう20年すぎてるんだから、外れただろう?」

 今巷にはやっている疫病が恐怖の大王で、暦の計算の誤差で今年のことだとか言い出すと思ったが、違っていた。

「いや、その予言はすでに当たっている。恐怖の大王は降ってきていて、世界はすでに幸せに統治されているんだ」

 ……? まるで言っていることが不明だ。どういうことだと聞いてみる。彼はカメラの向こうからこちらに指をさしてきた。背後を見ろということだろう。

 振り返る。あったはずの世界が消え去り、虚空が広がっていた。その後、思い出したように元の部屋に戻る。

「処理の都合上、たまにそういうのが見える」

 この世はすでに、滅び、仮想現実となっていた。なるほど、幸せに統治されるというのは、こういうことなのか……。

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