意味不明な質問

 買い物帰り、歩道を歩いていると奇妙な雰囲気のおばさんが近づいてきた。年は還暦を迎えているかどうかだろうか? 着のみ着のままで数日過ごしたような違和感がある服装で滑るようにこちらに近づいてきた。

「すいません。一つお尋ねしたいのですが?」

 道でも聞くのかと思って頷くと、「こんなことを急に聞くのは失礼かもしれませんが、今非常に困っています。アメリカ合衆国の歴史がわからないのです。アメリカはいつ建国されたのでしょう? それとホワイトハウスの警備内容について知りたいのです。これを知らないと生きていけないのです。明日までに知る必要があるのです。どうにか教えていだだけませんか? お願いします」

 息をつかないくらいの早口でおばさんはまくしたててきた。背筋が凍ったように寒くなる。

 全く何を言っているか、頭の理解が追いついておらず、僅かに放心状態になった。

 それを無視されたと考えたのか、おばさんの顔色が真っ赤に変わる。

「くそ、くそ、どいつもこいつも不親切だ。だれも教えてくれない。不親切だ。畜生、くそぉ」

 おばさんは地団駄を踏み始めた。

 恐怖に駆られて走り去る。後ろでおばさんの金切り声が聞こえた。

「教えてくれないと、天罰が下るぞ。因果応報だ。この〇×野郎!」

 

 次の日、その道で例のおばさんが別の人に質問しているのを遠目で見つけたので、通り道を変えることにした。寝ずに質問をし続けているのだろうか? しばらくはその道を通らないことにした。



 

 

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