待ち続けても……

 会社も当時はまだ景気が良く慰安旅行も年に一度行っていた。その年は社長が体育会系でスポーツが好きということもあり、雪山でスノーボードを行うことになった。

 自分はそんなものはやったこともないが、断ろうにもパワハラ同然で連れてこられ、無理やり滑らされた。

 しかも誰も来ないような急斜面から無理やり滑らせた。わずかな段差にボードが乗り上げ勢いよく宙を舞った。

 そのまま、ボードは足から外れてしたたか尻もちをついた。雪の冷たい感触が服を通して伝わってきた。

 ふらつくように立ち上がろうとしたが、右足首に激痛が走る。どうやらひねってしまったようだ。

 

 雪が静かに降ってくる。周りを見ると人がいない。ボードは数十歩離れた雪に刺さっている。

 上司が滑ってくると思ったが、気配もない。それどころか人もいない。這いずるようにボードまでたどり着いた。

 下を見ると雪が積もった斜面が延々と続く。上も斜面が続いていた。違和感が襲ってくる。

 このまま這いずるように上に向かおうと思ったが、斜面は果てしなく続いている。ボードをどうにか引き抜くと、斜面の下に滑り落させた。誰かが気づいてくれることを期待しての行為だ。

 あたりは暗くなり、雪はさらに降り続いている。体が動かなくなってきた。


 しばらく意識を失っていたらしい。上から人が数人滑ってきたので、助けを叫ぶが誰も気にもしない。

 

 それからどれくらい経ったかわからないが、いずれあの上司が来るのをここで待ち続けている。


 

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