神の啓示
物心ついた時から、文字が見える。学校の黒板の端に白い文字で書かれていたり、空を見ると、煙が文字になっていたりした。
他の人に聞いてもそんな文字はないという。文字は意味がわからない。さながらミミズがのたうち回ったような形だが、きっといずれ意味がわかるようになるにちがいないと確信している。
今日もふと電車の広告を見ると、でかでかと例の文字が書かれていた。数回瞬きすると、文字は消え広告だけになる。
年を経るごとに文字はしっかり見えるようになってきた。大人になった今もパソコンの画面の端に文字が表示される。
誰に聞いてもそんな文字は見えないので、自分が特別な存在だと思うに至り、きっとこの文字は神の啓示だと思うようになった。
どのような嫌なことがあっても、理不尽なことがあってもこの文字が見えるという優越感が支えとなり耐えることができた。
どうしてもこの文字の意味が知りたいと思い、色々と調べると図書館で古い文献を調べるとようやく知ることができた。
あまり知られていない古い言葉で、『ようやく読めたか。のろまめ。お前は特別でもなんでもないぞ。これから死ぬまで何もいいことはない』という意味だった。
以降、文字は見えなくなった。いっそ見えていたのは錯覚だったと思うようにしている。
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