若返るとやりたいこと

 年齢も平均寿命に近づき、残りの人生もわずかになっている。やりたかったことが多々あり後悔の念に襲われていた。

 すでに連れ合いもなく、子供たちも巣立ち、死出の旅への準備期間となっていた。築40年を超える家に一人で住んでいると、時間の流れもさらに速くなっていくようだった。

 近所の人とたわいもない話をしたり、猫の額のような庭に植えている野菜の世話をしている。

 そんなある日、夢に神々しい姿が現れ、お前は人生をやり直したいか? と尋ねてきた。

 若返るならやり直したいという。姿はわかったという。

 目覚めると、十代の頃に戻っていた。記憶もそのままで経験もそのままだった。周りは子供ばかりなので、うまくやり込めるのも簡単で、やり残したことの一つである多数の異性との付き合いも簡単にできた。


 かつて若かりしころは不良にあこがれていた。

 一度やってみたいことがあった。道路に止められているバイクが目に止まった。静かに近づく。

 ハンドルロックもかかっていない。簡単に鍵を解除し、アラームを止める。

 そのままバイクにまたがり走りだした。免許もない。ノーヘルだった。すさまじい解放感だ。

 フルスロットルでエンジンをふかし、メーターがあがる。体感速度がどんどんあがる。景色が後ろに吹き飛ばされていった。

 そのまま、前方のトラックに激突し、宙を舞う。

 最後の記憶は、地面に強くたたきつけられた衝撃だった。

 

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