人が猫に見える
いつからだろう。いく先々で猫を見かけるようになったのは? 今日もふらつくように道を歩くと、路地裏から数匹の猫がこちらをうかがっている。こちらには来ないが、いつも見かける猫だ。黒い猫、白い猫、三毛猫と覚えやすい毛並みだった。
彼らはこうして潜んでいる場合もあるが、道の真ん中で堂々と待ち構えている場合もある。興味ありげなのか、何かを案じているのか、その表情からは読み取ることができない。まるで人のような猫たちだ。もしかして、彼らは人だが猫に見えているだけなのかもしれない。確か昔の詩でそんなのがあったような気がする。
殺気や危害を加える気配は感じないが、付け回されると気味がわるい。とにかくにげることにした。歩道を走る。気配はぴったりついてきた。道行く人を交わし、信号がない道を車を避けて渡った。
道を走り抜けると、見知らぬ家と家の隙間に身を隠す。視線を感じて上をみると猫が数匹こちらをのぞいていた。
猫の脚は早い。逃げることはなかなか難しいようだ。
逃げ回るのも飽きてきた。さいい加減腹が立ってくる。
「いったい何の用だ」言葉が通じるわけがない。そう思いながら叫んだ。
黒い猫が一匹、軽い身のこなしで屋根の上から降りてきた。ゆっくりと近づいてくる。こちらの言葉がわかっているのか?
「そもそも、猫に用事はないぞ」
「いや、こちらにはある」黒猫はゆっくりと答えた。
「猫がしゃべった!」
「いや、お前も猫だろ? たまにいるんだよな。自分が人間と勘違いしている奴。勘違いしたままだとまずいから忠告してやろうとおもったら、逃げ出すし。いやぁ、お前は足が速いから追いかけるに苦労したよ」
黒猫はそういうとニヤリと笑った。
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