帰りがけの駅

 毎日、同じ駅から電車に乗り、会社に通っている。代り映えのしない毎日に飽き、倦んでいた。

 そんなある日、仕事帰りに駅の改札を出ると違和感に襲われた。

 普段なら、改札口をくぐり右折すると、階段がある。階段を下ると目の前にラーメン屋があるはずだ。

 しかし、あったのは蕎麦屋で、その隣には空き地であったがコンビニになっていた。

 間違えた階段を下りたのかと思い、振り返ると駅の名前が全く見覚えがないものに変わっていた。

 車が目の前を通る。車の形はこうだったかという疑問がある。周りをみると11月というのに、夏服を着た人物が歩いていた。

 妙にこのまま道を歩いていくと、別の世界に行ってしまう気がしてきた。すべてを捨ててどこかに行きたいという願望が心をよぎる。

 空を見上げると、星の位置が変わっていた。見たこともない星座だった。めまいがする。スマホを取り出すと、文字化けしているのかよくわからない記号が表示されている。

 進むか、とどまるかしばらく逡巡する。階段に腰かけて目を閉じた。

 目を開けると、見覚えのあるラーメン屋があった。その隣には空き地がある。振り向くと駅の名前が戻っていた。


 何が起こったかわからない。もし、あのまま進んでいるとどうなっていたのか? いずれ行かなかったことを後悔する日がくるのだろうか?

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