夢の砂

 ただひたすら砂漠が広がっていた。太陽は照りつき肌を焼く。口の中が乾き、汗は流れるたびに気化して消える。靴が砂を踏みしめると熱い熱が足の裏まで伝わってきた。吐き出す息も熱をはらんでいた。ただ取りつかれたように一歩、踏み出す。さらに一歩。ひたすら歩く。砂浜が風で崩れる。霞かかった遠くには何か建物がみえた。

 なぜか、そこに行かなければという思いがあった。限界を超えたのか、体が動かない。靴の中に砂が入ってきた。

 

 そこで、目が覚めた。アパートの狭い一室で布団を跳ね飛ばして飛び起きた。口の中が乾いている。台所でお茶を飲んで人心地ついた。何か嫌な夢を見たような気がする。朝食を用意して食べ、身支度を整えて、出勤しようと靴に足をさしこむと、なぜか砂が入っている。靴をさかさまにして砂を取り出した。砂は熱い。何か見覚えがある気がしたが、時間に追われてアパートを飛び出した。


 その日、一日の仕事を終え、疲れた体で眠りについた。


 砂を踏みしめて蜃気楼の彼方の遠く見える建物に向かっている。全身から水分が揮発する。建物は近づかない。足を動かす。どれくらい進んだだろうか? 建物が近づいてきた。階段がある二階建てのアパートに見える。見覚えがある気がした。

 アパートはぽつりと砂漠の真ん中に立っている。違和感がある。本能的に近づかない方がいい気がした。しかし、意に反して手は扉を開けた。鍵はかかっていない。


 中に入った瞬間、目が覚めた。砂漠を歩きながら意識を失っていたようだ。もはや、遠くに建物は見えない。

 どうやら見知らぬ場所にいる夢を見ていたようだ。

 砂漠は果てしなく続いている。

 自分にとって、すでに現実である砂漠を命つきるまで歩くことになるのだろう。

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