斬られた足
実家に帰った時に祖父に聞いた話だ。
幽霊はどうして足がないのかというたわいもない話から、祖先が体験した不思議な話となった。
先祖は刀の切れ味を試すという仕事をやっていて、切れ味を試すため、死体を使っていたらしい。
色々と死体を斬っては刀の切れ味を確かめていると、ある日、こんな依頼が来たそうだ。なんでもその刀は切れ味鋭く、斬られたことを気づかせないという業物だった。
証明するために、生きた人間を試すことになった。ちょうど殺しで死罪となった者がおり、逃げきれれば咎を免除するということで試し役とさせた。
祖先はわずかに腰を落とすと、今まさに逃げ出す罪人の太ももに向けて、居合で斬撃を放った。
刀は狙いたがわず足を付け根近くから切断したはずが、そのまま罪人は処刑場を走っていった。確かに砂を踏みしめる音も聞こえたそうだ。
足は確かに切断されており、地面に忘れ物のように突っ立っていたが、しばらくして思い出したように血を流して倒れた。
しかし、罪人はないはずの足で走り続ける。そこで、先祖がお前の足は切断されているからもうないぞというと、罪人はふと立ち止まり、そこから頭から倒れこんだそうだ。
走っているときには、斬られて転がっている方とは別に、罪人には足はついていたように見えたという。
祖父は話し終わるとその罪人なら、死んだあと幽霊になっても足はないんだろうなぁとつぶやいた。
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